U-18の監督は、スモールベースボールをやるぞ、と選手に伝えていたそうだ。
スモールベースボールとはホームランのない、打ちまくらない野球のことを指す。
スモールベースボールと言ったとき、それは攻撃のことを指し、守備のことではない。
ゆえに、
攻撃方法はダイヤモンドの中でボールと選手が移動し、そうして得点を相手よりひとつ上を目指す、ということになる。
U-18の戦いになったとき、日本は高校野球の選抜チームとなる。
特に、高校野球をすでに終えている、高校3年生で構成されることになる。
高校野球は金属バットなので、木製バットでの初めての野球となり、相手の情報も少ないうえ、
高校野球とは違う野球展開となる。
そして相手も有力なチームは皆、日本チームより大きい。
加えて、大型のチームはこのくらいの世代は大味な野球をやってくる。
当然、日本としては打ちまくって点を取ろうなどという発想にはならない。
そもそもそんなことはできないのだからやるもやらないもないわけだ。
普通のことをやるということだ。
スモールベースボールなどという言い方はいつからできたものか。
WBCができてからだろう。
野球の国際戦がはじまり、諸外国が展開する野球とは違う戦い方をする日本という意味で誰かがつくった言い方だ。
そこには自虐の意味が込められており、体格に劣る日本人は同じ野球はできない、という表現だ。
パワーではどうしようもないから技を駆使して抗っているという。
スモールベースボールという言い方をやっている側、特に監督の口から発せられることに嫌気が持ち上がる。
スモールベースボールは観ている側が評する言い方で、やる方がそれを言うことには、どうも納得できない。
それは、いわゆるスモールベースボールが指すところのベースボールこそ野球の本質がたくさん詰まっているからだ。
野球の本質はどうやって27個のアウトをとるか。それも、こちらにも許される27個のアウトの中で
いかに自チームが踏むホームベースの回数より1度少なくしてアウトをとるかというゲームだ。
ホームランもその過程で生まれる作戦、展開の1つに過ぎない。
27個のアウトを獲るために、ボール球を使ったり、歩かせたり、ヒットだったらOKの攻めをしたり、
点を獲るために、打率の高い選手の前にランナーを出したり、アウトひとつを犠牲にしても右に打ったり、
といったことを繰り返し、9イニングを戦うのが野球であり、競技としての面白さがあり、
それがあるからこそ、何十億もの給料が発生する選手が誕生する。
本来の野球をやるだけ。
本来の野球に対してパワーで振りまくるだけの野球がある。
そっちがビッグベースボール、と言うよりラフベースボールがあるだけだ。