あまりにも有名な87年の日本シリーズ、西武VS巨人。
西武の上手な野球にやられた巨人は、これ以降、球界の盟主交代を告げられた。
有名なのは、辻のあの走塁があったからだ。
1塁ランナーの辻が秋山のセンター前ヒットで一気にホームインしたあの走塁だ。
戦前からセンター・クロマティの緩慢プレーに目をつけていた、伊原コーチは
クロマティのところに飛んだら、果敢な走塁をする作戦を立てていた。
そしてそれを、選手に伝え、浸透させておいた。
辻が1塁ランナーにいる場面で秋山のセンター前ヒットは左中間に飛んだ。
クロマティから見て右へ移動することになり、前に出てこず捕球した。
ランナーを意識していれば、もうちょっと前の位置で処理してもいい打球の
勢いだった。
クロマティは左利きなので、捕球から送球へは右側で捕球してから左へ回転しな
ければならない。右利きなら捕球した勢いでそのまま返球ができるが、
ここも時間を要する一因だった。
それに輪をかえて、クロマティの大きなモーションと緩い球での返球で時間がさらに
かかる。
そして極めつきは、川相のカットの位置だった。
クロマティの動きから辻の3塁進塁を諦めた川相は、1塁ランナーの2塁進塁を
避けるカットラインに入った。
つまり、左中間で捕球したクロマティと3塁に結ぶラインに動きながら、
方向を変更して、2塁に近い位置になるよう脚を止めたのだ。
そこで伊原3塁コーチは川相が右回りで1塁ランナーを気にする動きをしたら
ゴーさせようと瞬間的に思った。
3塁で止まるだろうと思った川相が1塁ランナーの動きを気にして、
3塁に目をやらないのを確認した伊原は回した腕を止めることなく辻を突入させた。
この時、腕を回しながらも川相が辻を先にケアしたら、そこで止めればいい。
3塁コーチはギリギリ戻れるというところまで回して、戻れの指示を出すものだ。
これを引っ張って、引っ張って止めると言う。
これらが絡み合い、伝説プレーが誕生した。
ところが、さらにこの伝説のプレーを生んだ、ある伏線がその前に起きていた。
それは次回に。
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