昨日は、イチローに最大の敬意を込めた。
イチローにはおめでとうという気持ちが起きない、ありがとうという気持ち。
イチローは私のひとつ年上。
私が、高校三年生の時、翌年から日本にもプロサッカーリーグが開幕するとなった。
そして、Jリーグが開幕し、あのドーハの悲劇が起きた。
世は一気にサッカーブームとなり、Jリーグのスタジアムはどこも満員、熱気の渦となった。
サッカーはファッションの一環として生活の一部となり、その関連グッズを身に着けることも
ステータスになった。
一方、野球は一昔前のパンチパーマ、セカンドバッグ、金ネックレスのイメージも影響し、
また、高校野球の坊主からダサい、古いとなり、野球離れが大きく叫ばれることになった。
ONが去り、球界にスーパースター不在が20年以上続き、野球の行く末を案じる中、
まさに救世主として登場した。
日本が高度経済成長の中、その象徴として人々を熱狂させたON。
バブルがはじけ、サッカー人気に押される中、登場したイチロー。
この時、イチローが現れなかったら野球はどうなっていただろう。
今の若い一流野球選手の多くに影響を与え、野球の道へいざなった。
そして、大谷、柳田、山田と新スターが現れてもなお、
今だに幼少の野球少年の目標であり、憧れでありつづけている。
野球界の危機を救い、野球関連産業、野球人気の復興に寄与した功績は、計り知れない。
今の野球選手もイチローがいなければ、野球をやっていない可能性すらある。
野球選手にとどまらず、あらゆる世界のアスリートに目標にされ、影響を与えた。
昨日の偉業には、野球界にとどまらず、各界のアスリートから尊敬の念をこめた祝福の嵐だった。
イチローがいなかったら
ゆとり教育などと言われ、その悪影響もささやかれる現状、
前時代的な封建の仕組みが残る高校野球が今の姿で存在できたか。
高校野球には左打者がものすごく増えた。右打者より多いチームも少なくないどころか、
野手全員左打者なんてこともある。
野球のルール上、左打者が有利だからという理由以上に
イチローと松井の存在が影響していることは明らかだ。特にイチローの影響が明らか。
右利きが左に替える。右投げ左打ちが急激に増えた。
そんなイチローを昨日は、数字で表現した。
それまで130試合制での最多安打は、イチロー出現時、
オリックスの打撃コーチをしていた新井が記録した184本だった。
新井曰く、
「あの記録は、破られることはないだろうと思っていた。それは、記録したあのシーズンはすべてうまくいったからだ。調子の良さはもちろんのこと、けがもなく、運も向いていた。」
それを、イチローは新井の目の前で破り、さらに最多安打記録の191も突破し、
前人未到の200を優に超えた。
143試合制なら231本という圧倒的な数字に達する。
そしてさらに、
この143試合だったらという仮定の話を持ち出すまでもなく
イチローは大リーグで262安打をして、驚愕の証明をしている。
昨日も取り上げたものだが、
この時、161試合の出場で262安打。
これが、143試合なら232安打となる。
162試合制だったから162としても
143試合に換算すると
ここでも231安打を超えている。
実際に、このシーズンは、131試合目通過時点で212安打しており、94シーズンに酷似している。
4割を期待されたあのシーズン。
記者からの
「スコアボードに400の数字を記してくれ」
のリクエストに応え、400を記すとともに、120試合を越えても390台の打率を維持した。(別のシーズンだったかな?)
イチローのバッティング技術は次元が違うものだ。
今、考えられる理論で言えば、完璧といえるものだろう。だが、真似が難しい。
その、卓越したバッティング技術があるがために、欠点が生まれてしまった。
ボール球でさえヒットにできてしまうということだ。
バッティングの極意は、主導権のあるピッチャーが投じる球を、自分の打てる球に呼び込み
いわゆる甘いといわれる打てる球を仕留めることにある。
イチローは自分からピッチャーに寄って行って、ボール球でさえ打てると判断してしまう。
これは、どうしてもミスショットが生まれる。
イチローは、自身の調子を判断する際、空振りできることをひとつの目安にしている。
ボール球でさえ、打てると判断してしまう技術ゆえ、
難しい球をバットに当ててしまう。
打ちに行ってやめようと反応したとき、
空振りに出来れば、ひとつの調整ができていると判断するそうだ。
イチローが200安打して以来、ヒットマンの評価に200安打を達成することが加えられた。
200安打を達成した青木や西岡が、その達成時の数字をイチローと比べれば、さほど見劣るものではない。
同じシーズンに戦っていれば、首位打者争い、安打数争いを演じたかもしれない。
日本のレベルではイチローに近づいたかに見える。
だが、
さらに上のレベルに行ったときその実力の差が歴然と現れた。
MLBでの実績は雲泥以上の差だ。
これについて明日、取り上げてみよう。