交流戦に突入し、セ・リーグ開催試合は日頃、打席に立たないパ・リーグのピッチャーが
バットを振ることになる。
一流の打者でも3割しか成功しないのが打撃という所作だ。
丸いボールをまるまっているバットでわずかな芯のスポットへ当て、野手のいないところに落とす、
という難しい所作。
毎年、将来を嘱望されて入団してきてたいした打撃技術を披露せず去って行くことがほとんどのプロの世界で
ピッチャーの打撃に期待するなどこの世で最も無謀な行為と言える。
いくら打撃が良いピッチャーと言っても打者(野手)としてプロの世界に入って1軍におり、
日々鍛錬している選手よりは劣るわけだ。
ピッチャーはバッティングに関してはプロ野球選手ではないのだ。
そのアマチュアにはバットを振らせたくないからランナーがいる場合はバントの作戦を用いる。
こうなると打てないのだからバントくらいちゃんと決めろ、という見方になってきてしまう。
ある試合で3回無死一、二塁の場面で打席にはピッチャー。
当然バントが予想される。
ところが2球失敗してなお、ベンチはバントの指示。
結果はスリーバント失敗となった。
解説者は
「こういうところを決めなきゃいけない。ピッチャーと言えどしっかり決めなきゃ。」
だそう。
あいかわらずのテレビ解説。
ピッチャーは投げる能力を買われて入団している。
投げることで稼いでいる。
バントを100%成功しても、抑える能力がなければ雇わない。
投げて抑えることに野球生活の99%以上神経を使い、チームからの指示も
他の選手からの要望もファンからの期待も投げる能力について評価される。
投げる能力があれば、キャッチボールができなくともバットを握ることさえできなくとも
走ることができなくとも評価は変わらないだろう。
そのピッチャーがたまたまランナーがいる場面で打席に立った途端、
バントを成功させなきゃいけないとされる常識は理不尽だ。
たしかにヒットを打つことよりバントすることの方が簡単とされる。
そして日頃からバントだけを練習していれば打撃についてはアマチュアのピッチャーも相当うまくはなりそうだ。
それでもバントがうまくてプロになるピッチャーはいない。
ピッチャーの優劣は打者を抑える能力で決定され、その能力が高い人からプロとしての序列が決まるのだ。
フィールディングがうまいから1軍の試合に登板するピッチャーはいないし、
けん制がうまいからドラフト1位指名されるピッチャーはいない。
バントについてのまずひとつの誤った常識が、打者としての能力まで求められていないピッチャーに
バントの技術を求めること。
求めるのなら日頃からの練習量と力量をしっかり把握しての事だ。
もうひとつの誤った常識がバントは決めて当たり前ということ。
特にこの試合のケースのように一、二塁のフォースプレイの場面では三塁手に捕らせることが求められ、
はっきり言って難しい。
たまにしか打席に立たず、バントも年に数度しかしないピッチャーがプロの投手の球を
三塁手に捕らせるようにバントすることはとても難しい。
バントは決めて当たり前と同時に配球やシフトで決めさせない守備の作戦もある。
ということは、決められてしまったら守る側のミスという見方もできるのだ。
そしてバントを決めたら守備の包囲網の中、良く決めたファインプレー。
防げば、守備側のファインプレーという見方。