メキシコ戦のサヨナラの場面で左中間を割った打球に相手守備陣は負けを突きつけられた。
センターからの返球を受けたショートは間に合わないとわかっていながらホームへやぶれかぶれの送球をした。
やぶれかぶれだから送球は大きく逸れることになる。
対して日本陣営はサヨナラに歓喜の最中、もう勝負はつき、プレーは終わったと思っているので
グラウンドへなだれ込んでくる。
すると、逸れた送球が喜んでボールの行方から目をそらしている選手に当たりそうになってしまう。
サヨナラの場面ではこういうことが結構、起きる。
両者の悲喜が正反対のため、とる行動がまったく違うことになり、危険な瞬間だ。
優勝の瞬間、グランウンドへ駆け入る選手の中で吉田が一人こけている、と話題になった。
ケガをしないようにフェンスを乗り越えたのは明らかだったのにこけているされてしまった。
人を追跡している時、金網を乗り越える場合はこういう方法をとる。
警察などでは常識だ。
飛び越えてケガをしないように身体を預けてしまい金網に捕まりながら、なるべく地面との距離を短くするのだ。
吉田はさらに入念に足での着地も回避して手をつき、転がるようにしてグランドインをした。
足への負担は全くなくし、手も地面になるべく近く、安全と確信できる距離まで縮め、
衝撃が最も少ない形にして受け身をとっているのだ。
ブサイクだけどプロとして最適の行動だった。
その吉田はメキシコ戦の9回、四球を選ぶと三塁側ダッグアウト方面を指した。
瞬間、村上へ向けて、よし、回したぞ、と伝えたのだと直感した。
後に話題となったシーンではあるが、一般には村上に対して、お前が決めろ、
というメッセージだったという風に受け取られている。
解釈に大差はないが、お前が決めろ、では長打が必要になってくる。
試合を決めるのには2点がいる場面であり、それには長打が必要なのだ。
長打を要求する場面ではなく、とにかくつなぐことが大事な場面だから、お前が決めろ、よりは
チャンスをお前に回したぞ、の方が合っているだろう。
お前につないだからな、というメッセージだ。
そしてその村上はアメリカに渡ってからストッキングを見せるスタイルに変更していた。
いわゆるオールドスタイルとかクラシックスタイルとか韋駄天スタイルとか言われるタイプ。
かつてイチローが不振の時、チームメイトが揃えたことを思い出させる。
そしてアメリカの地で日本中を興奮させたイチローのタイムリーを小さい頃見て
野球を続けてきた村上は
アメリカの地でそれにあやかり、真似たかったのだろう。
アメリカに渡ってからはストッキングを見せるスタイルでプレーしよう、と決めていたと思われる。