遠くへ飛ばす技術を身に着ける練習としてボールの下をたたき、バットを潜らせ、
打球に角度をつけて、運ぶ感覚を身に着けることが有効という話を以前したことがある。
具体的にはティーバッティングでもポップフライに近い、上に上がる打球を打つこと。
ロングティーをやること。
外野ノックでも、運ぶ感覚は身に付く。
遠くに飛ばす技術として、もうひとつ簡単なコツを紹介すると、
それは、グリップエンドに指をかけるということだ。
これをやるとヘッドの重さを感じられ、ヘッドを効かせられる感覚を養うことができる。
ヘッドが効かせられるということは、押し込みが効くということにつながる。
インパクトの瞬間に力が加えられ、ヘッドが立ち、強いボールに力負けせず、
打ち返すことができる。
落合は、
「人差し指はなくても、バッティングはできるが、小指がないとできない」
と発言していた記憶がある。
ゴジラ松井は、2000年から小指をグリップエンドにかけて打ち出した。
このバッティングをこの年からやろうと決意して、その年のキャンプで打撃改造に取り組んだ。
おそらく、指にかける打ち方で飛ばす感覚をつかんでいたから、取り組む決意をしたのだろう。
これに当時監督だった長嶋は反対する。
「ワンちゃんだってそんなことはしなかった」と。
しかし、松井は頑固にこれを貫く。
おそらく、指にかけることでヘッドを立たせ、押し込みを効かせ飛ばそうとしていたのだろう。
この使い方は、ムチのようにバットを使うイメージとなる。
実際に、松井は「ムチ」という表現を使っていた。
そしてシーズンに入ると、ゆったり構え、打ちに行くとき少しヒッチさせ、打球に角度をつけ、
他を圧倒する飛距離を出すに至る。
ちなみにヒッチとは、バットを少し上下にする動きのことを言う。
ホームランバッターはこのヒッチをさせて、スイングスピードを出す。
昔の打者には多く見られた。
大下や王、中西といったホームランバッターはヒッチを使う。
長嶋もヒッチさせていた。
ベーブ・ルースやルー・ゲーリックも。最近ではボンズも。
日本の現役打者では、丸が激しくヒッチさせている。
ただ、このグリップエンドに指をかける打ち方は、体ができていない段階でやると
大きなスイングになったり、ボールをとらえられなくなったりする可能性がある。
また、自分の感覚には合わないと感じれば、やらなくてもいいだろう。
無理にその打ち方を強制せず、技術の上達、体の成長により、
自分の打ち方に合うという感覚に至ったときに
実践してみれば、遠くに飛ばすには有効な技となる。
そして、自分の打撃スタイル、プレースタイルに必要ないと思えばやる必要ない。
あくまでもコツの一つだ。