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走塁の目的は速く走ることではなくホームインすること

昨日の日ハムの試合に二塁ランナーが2死から打球を見てしまい、生還できないというシーンがあった。

野球で絶対やってはいけないプレーであり、小学生でも両軍ベンチ、観戦者にあきれられるプレーだ。

 

WBCでは大きく取り上げられる走塁のシーンがあった。

メキシコ戦の9回、吉田がフォアボールを選んで無死一、二塁となったところで
周東を起用した場面だ。

まず、この代走起用に喝采があり、次いで周東の快走に喝采があった。

 

吉田を引っ込めて脚の切り札を出すということはこの回で決める、という意志のあらわれだ。

延長に入ればタイブレークだから、そう長くは続かないことが予想される。

吉田に次の打席が回ってくるのと、無死でランナー二人となったこの回に2点を獲ることを天秤にかければ、

代走で勝負の選択が最適だろう。

 

10回以降も普通のイニングが続くなら代えなかったかもしれない。

ランナーがいる状態なのに、一番遠い打順の吉田の一打席のためより、この回決めに行く、

というベンチの動きが勝負であり、興奮は最高潮となる。

 

そして、周東が大谷のすぐ後ろまで来るほど快速をかっとばしたことと、逆転サヨナラのホームインだったことと、

WBCという注目が集まる試合だったことがさらにこの采配が大きく取り上げる要因だった。

 

次に、周東の快走だ。

大谷だって俊足なのに、そこに追いつくほど周東は速いような受け取り方がされていた。

しかし、二塁ランナーの走塁と一塁ランナーの走塁は全く違うので

追いつくほどだからと言って必ずしも周東が速すぎるということにはならない。

 

そして周東でなかったら還って来られなかった、というのもそうではない。

走塁の基本を大谷と周東がやったから、そういう現象が起きただけだ。

この場面は無死なので、ランナーは打球の質によりスタートを判断する。

昨日の日ハムは2死なのに打球の質を見てしまったので大チョンボという事になる。

2死はどんな打球でも当たった瞬間、ゴーだ。

 

二塁ランナーの大谷は左中間深くに飛んだ打球には落ちたのを確認してからスタートしてもゆうに間に合う。

そしてセンターがもし好捕したらタッチアップも考え、それほど離塁をしない。

それほど離塁をせずに落ちることが判ってからでもホームまで還って来られるからだ。

逆に一塁ランナーの周東はこの打球で是非とも生還したい。

 

ランナーはバットのどこに当たったか、角度は、打者のパワーは、といったことを直感で把握して

打球がどこらへんまで飛ぶということがだいたいわかる。

この時の村上の打ち方を見て、瞬時に周東は左中間を抜けると判断できた。

同時に周東はこの打球でホームまで還る、と決断した。

 

しかも左中間なのでその打球の行方を見ながら走ることができる。

センターの追い方と打球の行方を視界に入れながら走ることができるのでなおさら抜けることがわかる。

さらに一塁ランナーを楽にさせる条件がこの状況にはあった。

 

それは、左中間の打球には仮に捕った場合でも、三塁返球へのカットラインをつくるので

一塁へと球が還ってくることはないということだ。

だから大胆な走塁ができる。

もし捕られたとしても二塁をオーバーランした後から戻っても間に合うし、

抜ければそのままホームまで還って来られるという走塁をする場面だったのだ。

 

周東は二塁を周ったところで一瞬、スピードを緩めた。

これは、一塁へも戻れるし、ホームへも間に合うという位置まで来たので

もう一度打球を確認するためにトップスピードから緩めたのだ。

その後、すぐにまた加速している。

 

対して大谷の走塁はいわゆるハーフウェイから完全に落ちる前にもう捕られることはない、

と判断し、シャッフルという形からスタートを切った。

二塁ベースを蹴って加速している周東は当然、大谷から数メートルの位置にまで来ている。

こうしてホーム生還は大谷のすぐうしろ、という状態になるのだ。

 

もちろん周東だからその差は最も縮まるのではあるが、他のランナーでもこういう現象になる。

そして、走りながら打球を見られる、カットラインも自分のところに還ってくるようにはつくらない、

という条件があれば、周東でなくてもホームインできるシーンだ。

 

走塁はうしろから走る選手の方が差を縮めるものだ。

それはどのランナーもホームまで還ることがゴールなので、そこにより近い前のランナーは

大胆な走塁をしなくてもゴールまでたどり着けるからだ。

目的は一周を最速で走ることではなく、ホームインすること。

点を獲るということだ。

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