ピッチャーの価値を計るときまず頭に浮かぶのは勝ち数だと思われる。
事実、名球会は長く200勝という基準だけだった。
チームの成績を計算するときも、先発ピッチャーの顔ぶれで誰が〇勝、誰々で〇勝などと積み重ねる。
だが、これからはピッチャーに勝ち星の数の価値はなくなってゆく。
現行制度でのピッチャーへの勝ち星は価値をなさない。
変化した野球戦略により今の判定制度は合わなくなったのだ。
先発ピッチャーが走者を一人も許さなくて味方が10点取っていて、次回登板のために
4回でマウンドを降りたとき、このピッチャーに勝ちがつかない。
チームとしてはピッチャーに勝ち星をつけてやることより、
能力の高いピッチャーを勝てる可能性のある試合に投げさせたい。
10点取ったらもう0点に抑えてくれるピッチャーを消耗させるより、次の試合の登板を考える。
ピッチャーにとっては勝ち数より防御率の方が正当な評価に近い。
勝ち数は運により、良いピッチングをしていてもつなかい可能性がある一方、
防御率は抑えていれば、悪くなるということがないからだ。
力のあるピッチャーや出来のいいピッチャーが長いイニング投げられればいいのだが、
ピッチャーは消耗することを考えれば、休養や分業のポイントを考えざるを得ない。
シーズンは長いから選手にもチームにも波がある。
だから負け試合をつくりながらライバルチームよりひとつ白星が多ければいいという戦いをするのがプロの仕組みだ。
先発ピッチャーが長いイニングを、とか先発ピッチャーが試合をつくって、とかいう戦いではなくなる。
一人での長いイニングの抑える確率よりワンポイントが増え、ショートイニングや一人一殺の戦い方に必ずなる。
それの方が確率が高いからだ。
ピッチャーの勝ち数が多いほど優れていると言い切れない。
負け数が多くても優れている可能性すらある。
防御率は点をやらない能力、奪三振は三振を奪いアウトを重ねられる能力として
ピッチャーの優秀さをその数字が物語るが勝ち星はそうとは限らない。
143イニングで143失点のピッチャーが143勝ということが理論上可能だ。