自分が監督でいる間に使う可能性の低い高校生を引き当てたところで、そんなにうれしいものなのだろうか。
しかも、監督業は数年で退任することが多く、また監督を務めた経験がある人は
他球団からもコーチや監督として請われるケースが多い。
そうなると、引き当てた高校生が戦力になる頃はむしろ手強い敵になるという可能性の方が高いとも思える。
ドラフト高卒選手を引き当てての監督ガッツポーズは違う意味も見えてくる。
一つは身内の努力に報いた安堵だ。
スカウトなどの編成部が調査をしてきた仕事を結実させた、ということだ。
仲間の仕事にひとつの大きな成果があがった瞬間にホッとしてのガッツポーズとみる。
無名の選手を拾う事こそスカウトの力だ。
でも、一般的にはそこまで見ていられないし、他に時間を割かなければいけない選手が
大学、社会人にいくらでもいるから、目はつけていても、とりあえず見送って成長したら、
という発想になるのが普通だ。
高校生指名の賭けには出にくいのだ。
阪神・佐藤は高校時代、全国では無名どころか学校自体も強豪校ではなかった。
それがたった4年で、阪神の4番打者になり、今は日本代表だ。
もし、佐藤を高卒で指名していたらスカウトは大仕事をしていたことになる。
しかし、そんなあぶない橋は渡れない。
ガッツポーズのもう一つの理由は選手とチームのその後を一瞬の抽選で担うプレッシャーからの解放だ。
ドラフト指名される選手には事前から指名することが伝えられている。
そして選手の意向もチームに伝わっている。
選手の野球人生とチームの将来をたった一瞬で左右してしまうのだから
それは重責に感じるだろう。
そのため双方の希望が叶う結果を引き当てられればホッとするに違いない。
今年のドラフトで巨人は浅野を1位指名した。
巨人が高校生外野手を1位指名したのは初めてだそうだ。
松井はドラフト当時は内野手だった。
常に優勝を求められるとされる巨人が今年シーズン4位ならば、
即戦力のピッチャーを指名するのが常道と思われるところ
高卒で、しかも外野手を1位指名とは巨人ブランドも変わったのか、という印象を受けた。