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甲子園出場からどん底そして復活のドラマ 仲間意識と恨み 再録

集大成の夏へと多くのチームが目を向ける時期となった。

 

今年の春の地方大会を制したあるチームは、以前、甲子園出場後、部内での暴力事件が明るみになった。

そこで、そのチームは1年間、対外試合禁止の断が下された。

 

対外試合禁止ということは練習試合すらできないということだ。

 

甲子園に出るようなチームに入ってきた選手は、ここで野球の実力を伸ばそう、

あるいは、甲子園を目指そう、あるいは高いレベルの環境で自分を鍛えよう、

あるいは、最高の環境で青春を謳歌しよう、と考えていたはずだ。

 

それが高校野球への参加を許されないなどとは、人生の絶望と言える。

 

そしてこの事件が悲惨だったことは、3年生から下級生への暴力沙汰だったことだ。

3年生による下級生への暴力が明るみに出たのが甲子園出場をした後で、

つまり、3年生は高校野球を終えているのだ。

暴力をした3年生は高校野球を満喫したのだ。

 

この出来事への制裁は、残された下級生たちに向けられた。

上級生の不祥事の責任をとる形となってしまった。

 

これからは俺達の時代と思っていたところで、暴力を受けた側の、

いわば被害者である選手たちが処分を受ける形となってしまったという

最悪の仕打ちなのだ。

 

これだけの仕打ちを受ければ、10代の若者はやけになったり、道を逸らしたり

するのも無理はないはず。

ところが、その選手たち、つまり引退していった3年生のひとつ下となる2年生は

1人もやめることがなかったそうだ。

 

公式戦に出場できないどころか、練習試合すらできないにもかかわらず、練習を続けた。

その練習の成果を発揮する場がないのに。

 

その選手たちは、その次代の後輩たちへのサポートという面を大いに意識したそうだ。

後輩へ夢を託したという見方が出来る。

 

高校生でそんな考えに至るか、というくらい、ちょっと信じられないどの

野球への情熱と仲間の団結だ。

 

そして、いよいよ処分が解け、事件当時の1年生が主力となった秋の大会は

初戦で敗れた。

しかし、自分たちに尽くしてくれた先輩たちのためにも甲子園出場への目標を保ち続けた。

 

1年間、試合経験がなく、秋も初戦で敗れたら甲子園など遥か彼方と捉えることが

現実的というか、まっとうな感覚と思える。

 

それでもそのモチベーションを保てたのは、稀有な立場が選手たちの心境に影響したのだろうか。

 

秋を初戦で敗けたチームには、春の公式戦は用意されていない時代だ。

残るは夏しかない。

 

この長い期間をブレることなく夏に照準を合わせた選手たちのその夏はどうなったのだろうか。

なんと、尽くしてくれた先輩の分も甲子園出場を目指して一丸となり、

見事栄冠を勝ち取った。

優勝を決めると、真っ先にスタンドで応援する1年上の先輩へ向かったそう。

 

しかし、いくら甲子園を目指すべき動機があり、バネにするだけの処遇にあったとはいえ、

秋初戦敗退から夏までモチベーションがもつものなのだろうか。

そして、甲子園を現実のものとしてとらえられるものなのか。

 

普通は俺達にはちょっと無理と判断しがちなもの。

一丸で目指したと記したが、中にはさすがに無理だろうなという意識を

持っていた選手もいたことだろう。

 

同じように甲子園を勝ち取るために、一心不乱の強豪が多くいる中でのことなのだから、

その幸運が自分たちに舞い降りるとは想像しがたいものだ。

 

しかし、見事な復活劇を見せ、念願を成就させた。

 

対外試合禁止という不遇の立場だった世代の人達は、

共に甲子園出場をした一つ上の先輩と一つ下の後輩に挟まれ、後輩たちの大願成
就に喜んだものの、

天地の境遇には憤りが残っているだろう。

 

愚行の先輩との溝は埋まらず、今も雪解けはなっていないとも聞く。

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