かつては巨人の宝だったはずの王が、ソフトバンクの王として違和感なくなるまでになり、
それは王を会長として囲ってしまっていることからも自然な感覚だ。
王はソフトバンク監督として、その前身である南海のユニフォームを復刻イベントで身に着けた。
その時、そうか、こういうことが起きうるのかと思ったものだ。
おもしろい。
野村が嫉妬し続けた巨人とON。
日本シリーズで痛めつけた南海のユニフォームを巨人の象徴とも言える王が着たのだから。
長嶋も実は、南海に入団する気持ちに傾いていた。
南海には立教の先輩である大沢がいたし、立教のエース・杉浦とともに
六大学のスター2人を南海が獲得するつもりだった。
長嶋は結局、終身巨人となり、南海のユニフォームを着たのは王の方だった。
久々、福岡にプロ球団が帰ってきて意気上がるファンは、ダイエーの監督を引き受け、
しばらく勝てない王に、頼むからやめてくれだの、やる気がないなら辞めちまえだの、
そりゃー巨人の、東京の、ファンだったら口にしなかったであろう罵詈を浴びせた。
巨人や東京の野球ファンならそれまでどれだけ夢を見させてくれたかと思えば、
数シーズン勝てなかろうと、とてもそんなことは口にできなかったはずだ。
プロだから、勝てなければ非難を受けるのは仕方がないし、そうあるべきなのだが、
あの日本の野球界の宝に対してたまごを投げつけるなどという暴挙、軽挙を犯したダイエーファンは
その落とし前をつけたのだろうか。
ファンは勝手なものだし、ファンあってのプロ野球であるとは言え、さんざん罵っておきながら
ひとたび勝てるチームになった途端、手のひら返しというのでは、さすがに調子が
よすぎる。
常勝軍団にまで育ててくれ、いまだに福岡に残っている王に対して何らかのけじめをつけたのだろうか。
巨人ファンはそこをはっきりさせてくれなければ、恨みに思っているはずだ。
王自身が福岡に根を下ろすと決めたことだが、たまごまで投げつけたのだから、
もうそろそろ巨人に返せと言いたいのではないか。
日本野球界の王を、いちソフトバンクファンが糾弾することに巨人及び東京のファンは怒った。
逆に言えば、そこまでの行動に駆られる程入れ込んでいるファンがいることはありがたいとも言える。
ダイエーの選手たちは責任を感じたことだろう。
あの王の顔に泥ならぬたまごを塗ってしまった、と。
イチローはWBCで王が監督を務めることになり、恥をかかすわけにはいかない、
と野球人生を賭けるほどの意気込みを語っていた。
かつて、長嶋が監督解任の折には、日本テレビ徳光和夫アナウンサーは憤慨した。
日本球界の宝に対しての仕打ちとして王への卵同様、恩義、仁義に外れた行動ということなのだろう。
もう読売新聞は買わない!と発言したとされる。
これは、長嶋茂雄はもう、巨人の長嶋ではなく、日本の宝、長嶋茂雄だ。
それを巨人という一球団がクビにするなど奢り。
これまでどれだけ長嶋茂雄に球団と球界は利益をもたらせてもらったと思っているのだ。
こんな意味にとることができる。
読売グループである日本テレビの一会社員がそれもテレビで発言したということは、
自身もクビを覚悟してのものだし、その怒りの大きさがわかる発言だった。
プロは多くの選手が球団で生き残ることを考え、
チームに選手の生殺与奪権があるというシステムだが、このシステムを超越するのが
スーパースターだ。


