高卒ピッチャーがプロの世界で戸惑うことの一番と言えるほど大きな事が、ストライクゾーンだ。
マウンドに立ってしまえば、幼少の頃から続けているピッチングをするということは同じことだ。
一般社会において、それまで学生として生活してきてから会社に入社したりして、
まったく慣れていないことをしなければいけないのとは違う。
ピッチングをするという今までと同じことをする。これは、楽なことだ。
マウンドに立ってしまえば、ピッチャーの本能が目覚める。
つまりは相手打者をやっつける本能が現れるのだ。
だからこの瞬間、高校とかプロとかの意識は一気に薄れる。
「喰ってやる」という闘争モードに切り替わる。
ところが、ここでストライクゾーンの大きな違いに、戸惑うことになるのだ。
ボール2つはちがう。
打者からしたら高校野球のストライクゾーンが広いこと、
審判によってどこをストライクととるかあまりにも違うことからど真ん中さえ打てなくなってしまう。
高校野球のピッチャーは
投げ損ないでもストライクと言ってくれるから楽になる。
ストライクゾーンに来た球をボールという主審はまずいない。
逆にボールゾーンをストライクと言う主審は一試合の中で数多い。
そんな高校野球を通過してきたピッチャーは、レベルの上がったプロの打者に打たれるというより
この狭くなったストライクゾーンのおかげで打たれる。
狭いストライクゾーンへ入れようとする神経、その心もちが最も影響する。
ピッチャーにとってストライクゾーンの差は、プロのレベルの大きな壁だ。
これに対応していくことで、プロで長く飯が食えることになる。
慣れだ。
この慣れと共通することでフォームを変えるという決断。
まだ、プロの水に慣れていない段階で打てないから、フォームが悪いんだろうと手を加える。
王、清原、松井、中田という大物ロングヒッターは、みなこの道を通ってきた。
来週この理由を説明しよう。