走ること不要論が叫ばれ、それに代わるトレーニングが推奨されるようになった。
野球選手は長い距離を速く走っても自慢にならない。
長い距離を速く走るための身体つきや筋肉の質では
野球において最高パフォーマンス発揮への妨げとなるからだ。
長く走るためには体は小さい必要がある。
小さいというより、体の肉はそぎ落とされていくのだ。
長い時間、運動をつづけるエネルギーは極力少しずつ消耗させていかなければ持たない。
だから重い物を移動させるには長い時間かけるとしんどいから、
軽くすることで長く運動をつづけることが可能となる。
体が軽いから長く運動が続けられるとも、長く運動を持続させるために軽くするとも言える。
対して野球は大きな体が有利なスポーツだ。
速い球を投げる、遠くに飛ばす、遠くに投げる、といった基礎的パフォーマンスは
すべて大きい体が有利にはたらく。
塁間の走り、打球を追う走りも長い距離はない。
ベース一周してもせいぜい100メートルそこそこだ。
短い距離を速く走る瞬発力は小さい繊維の筋肉ではない。
100メートルの陸上選手は皆、筋肉もりもりだ。
長い距離を速く走ることができる体の野球選手はへたくそを意味する。
野球選手で上等な選手になろうと思えば長い距離を速く走ることができるようではだめなのだ。
大きい体の選手に技術で負けていないとしてもパフォーマンスでは負けてしまう。
同じ技術なら大きい体の選手の方が、パフォーマンスが高いのだ。
野球選手の中で比べれば、体の大きい選手の方が長い距離を速く走ることができる場合もある。
それはしかし、個人の運動能力の差だけのこと。
それは体の小さい選手にバネがあるからだ。
バネは瞬発力を出すのに最も効果を発揮するものの、長距離には邪魔になることが多い。
体の小さい選手にバネがある、それはつまり白身の筋肉、速筋を持ついうことになり、
体の大きい選手に赤身の、つまり遅筋の場合に体の大きい選手が長距離を速く走ることになる。