イチローは、
「打者は胸をなるべくピッチャーに見せないことが大事。とにかく、早い段階で胸がピッチャーの方を向くと腕が自然に出てくる。すると、あらゆる球種に対応できない。なるべく胸を見せず、ヘッドを残しておくこと。」
と言っている。
そのため、胸を見せず、ヘッドを残すイメージで振りたいので
ネクストバッターズサークルから打席に入る前までの独特の動きになっているそうだ。
この意識。
イチローの胸を見せず、トップからの動きに集中し、ヘッドを残す打ち方を証明するように
イチローはエルボーガードを肘より二の腕に近い部分に装着していた。
エルボーガードはデッドボールから肘を守るために作られ、肘にフィットするように出来、
イチロー以外の打者はそのとおり肘にあてる。
おそらく、イチローは上記のバッティング技術により腕がなかなか出てこない。
打てる球と判断した時に、軌道に入れたトップから動き出すことになる。
デッドボールになる球と判断したときは、腕は動かない。
だから肘に当たることはなく、よけながら背中に当てるか二の腕に当たることになる。
イチローの高度な技術と体の使い方により、エルボーガードは肘にしないという現象となっているのでは。
ちなみにイチローは自打球から足を守るプロテクターもしない。
これは、していない打者も多くいるが、
今の野球界では、怪我防止のため首脳陣から着けるよう促されるケースが多い。
30年ほど前までの高校野球はバッティンググローブもエルボーガードも
足へのプロテクターも打者はしなかった。
なかった時代もあるし、許されていなかった。
今は、高校生でもこれらを装着する。
イチローがしない理由は、打ったあとの走りに邪魔になるという理由があるかも知れない。
イチローを象徴するスタイルとして、ストッキングを見せる着方。
これは、ユニフォームの裾を上げた方が、動きが楽だからということを聞いたことがある。
そして、イチローのスパイクは軽量ですぐに壊れるそうだ。
それくらい、道具に拘りがあるので足へのプロテクターをすることで
走りに支障が起きるくらいならやらないという判断かもしれない。
しかし、
それ以上にそんなところには打たない。
足に当てるような打球は打たないという自信からではないか。
できるだけ引きつけ、右方向に飛ぶ打球はフィールドに入れる打球を打つ。
ファールにするときは、ほとんどが三塁方向やレフトの方向、という技術だ。
落合もファールは反対方向であり、泳がされたり、インコースのボール球を打って、
引っ張ったファールはほとんどなかった。
高い技術の象徴といえよう。
イチロー出現時は、特に篠塚と比較されることが多かった。
イチローは入団当初から篠塚モデルのバットを使っていたそうだ。
特徴は、細いということ。
バットが細いとスイートスポットが少なくなり、ミートするのが難しくなるとされる。
しかし、卓越した技術により、その不利を克服することができ、細くすることで
バットを操作し易くするというメリットを享受している。
イチローが三遊間を割るようなヒットを飛ばすと
「篠塚のようにうまい流し打ちですね。」とこれに対し、イチロー本人は
「僕のは振り切っています」と同じ打ち方ではないと反抗していた。
篠塚は王が監督を退くことが決まった年、王から「今の篠塚のバッティングは神懸っている」と、
毎試合レフト前に運ぶバッティングを評して言われた。
この時、打率はイチローのようにシーズン途中まで4割を記録した。
イチローと篠塚の言動で共通すること。
ピッチャーにはできるだけ胸を見せないで崩されても逆方向。
バットは面でとらえる意識。
テニスの打ち方のイメージ。
視力はよくない。
投球はぼやっと見る方がいい。
フリーバッティングではスタンドにポンポン放り込む。
詰まらせてヒットにする。
ホームランは狙って打つもの。
篠塚は二塁ランナーの足が遅い時はわざと詰まらせて弱い打球にして、生還させようとしていたそう。
篠塚はもっと狙えばホームランは増えていた、と言い、
イチローは若い頃、ホームランは100%狙って打つ、と言っている時期があった。
イチローの狙うとは、打席に入る前からもあるし、投げた瞬間もあるし、球が来て打ちに行ってからもあるそう。
原が、イチローのフリーバッティングを観察している時、「篠塚さんのようだ」と言っていた。
その他の人からも篠塚のようだ、という発言をよく聞いた。
篠塚は初のウエスト76センチの首位打者だったそうだ。
確証はない。