源田が仕掛けた時は二死からのものだった。
だから自分が死んではいけない。
自分が生きなければ、1点が入らないから。
ということは、これはそもそもスクイズでもセーフティスクイズでもないのだ。
これはセーフティバントだ。
スクイズにしてもセーフティスクイズにしても、それらは無死か一死から仕掛ける作戦だ。
打者は死んでもいいから1点を獲るという作戦だから。
源田がヘッドスライディングしたのもそういう意味だ。
何が何でもセーフになるための全力疾走だったわけ。
セーフティバントの時のセーフティとはどういう意味だろうか。
打者が無事という意味のようにとらえられそうだ。
あるいは打者が安全となる、とかセーフになりたい、とかいう意味か。
死なずに1塁に生きるという意味だ。
そしてこれは、日本だけの言い方なのかもしれない。
ドラッグバントという言い方もあるから。
それに対してセーフティスクイズの時のセーフティとは三塁ランナーが安全にという意味だろう。
三塁ランナーが死なないために、ギャンブルを排除した安全策という意味だ。
どちらもセーフティという言葉を使っているが、意味は違うのだ。
打者に対してのものなのか、走者に対してのものなのか。
だから源田のプレーはセーフティバントであるはずが、三塁ランナーが生還し得点が入ったから、
スクイズととらえていいと思われて両方をくっつけたらセーフティスクイズになっちゃったということだ。
セーフティバントでもあり、スクイズのみたいな形であるから、まとめてセーフティスクイズとしてしまったわけだ。
しかし、セーフティバントのセーフティとセーフティスクイズのセーフティの意味は違うはずだ。
あの時のプレーは源田の発想だったのだろう。
サインではないはずだ。
周東はその前に二盗、三盗を決めてあの状況になった。
三塁へ到達したことで、セーフティバントのアイディアが最も浮かぶのは源田だろう。
僅差の終盤で三塁ランナーに周東、打者は源田と状況が整ったのだ。
周東も三塁へ到達した時点でやるかも、という用意があったはずだ。
ヒーローインタビューでは正直びっくりしたということだったが、
まったく頭にないということではないと思われる。
そもそも三盗自体が、源田へのメッセージだったかもしれないとさえ思ったものだ。
源田さん、セーフティやってよ、という。
二死から周東ならワンヒットで還れるのに、わざわざ三盗などしなくとも、という気になもの。
セーフになる確信があったから走り、キャッチャーの暴投を誘う、あるいはパスボールで突っ込むことを
考えて走ったのだろうが、源田へのメッセージだとしたらかっこいいと思われた。
源田もそのメッセージを受け取ったとしてやったのなら、なおかっこいい。
いかにもプロらしいプレーだということだ。
センス爆発の俊足コンビのもぎとった1点はこれぞ野球と言えるもの。