巨人はかつてバースが王に肉薄した時、勝負しなかったとされる。
真偽はわからないが、その時の監督は王だった。
王はもう巨人の王ではなく、福岡の王になってしまったので守るべきものでなくなったのか。
時間もかなり経ったし。
巨人が2発を許し、王の記録に村上は並んだ。
変化球の多様さ、それも細かい変化でわずかにジャストミートを外す技術が培われた今、
遠くに飛ばすのはかつてよりはるかに難しい。
しかも、速球のスピードを増す中ではさらに難しい。
そういう変化球がなかったから王はホームランだけ狙えた。
ホームランにするためにライト方向へ角度をつけるバッティングをしたわけだが、
それはフルスイングして外角の球でさえ引っ張ることができるスピードと変化球だけだったから
という見方ができる。
今の時代、引っ張るだけのホームランバッターは淘汰されてしまう。
ただ、これも慣れがある。
王が時代に合わせたバッティングを身につけられれば、量産できるかはやってみないとわからない部分があるが、
今の時代でもホームラン打者としての才能を磨くことになるだろう。
王が55本を記録したシース゛ンは半世紀を余裕で超えるほど前なので、比較は全くできない。
上述したように野球のレベルが全く違い、おそらく当時のプロのピッチャーは
今の大学生のピッチャーより劣るだろう。
さらに野球の記録を比べる際に、決定的に参考にならないことが、大きさに決まりがないということだ。
ハナから比べることが無理としてスタートしている。
ホームランというのは、ここから先に打者がボールを運んだら、または打ち返したら
打者の完全バッティングとして、もう得点にしましょう、4つの塁を与えましょう、
という称賛の出来事としてルールに組まれている。
その称賛の距離に決まりがないというのだから、本当に摩訶不思議なルールだ。
マラソンで42.195キロに満たないコースだったと、あとから判明したら問題になり、
記録は後世に残らない。
ゴールの大きさが違うサッカーの試合は存在せず、大きなゴールを使ったとしたらそのチームの選手を得点王とはしない。
クロスカントリーはコースに差があるのでタイムを記録して認識しない。
記録を違う尺度で競っても、まったく問題ない競技など野球だけであり、ホームラン王だけだ。
ひとつホームランの数で決める理屈としては、チーム対チームの勝利を目指す中で
試合が始まる前から球場の大きさはバッテリーも打者もわかっている。
打つか打ち取るかの勝負で外野フェンスの向こうへ届かせる行為を勝ち取った数が最も多かった打者が
ホームラン王と決めることができる。
その数が55回を数えたのが王と村上と解すれば、距離はさほど問題ではないのかもしれない。