いよいよ甲子園大会がはじまった。
夏がやってきたという感じ。
そしてこの場で春の戦いを見て以降、
洗練されたおもしろい野球をやってくれると記した平安高校がいきなり登場した。
最近の強豪校に多い、体格のよい選手を並べ
力でねじ伏せるというチームではなく、鍛え上げられた試合巧者という印象だ。
春のセンバツ大会では
各打順での役割を認識しているかのようにしっかり打ち、走り、つなげていた。
ディレードスチールを決めたり、
サインプレーで牽制アウトをとったりと、
野球の本当のおもしろさを教えてくれるようなチームと感じたものだ。
相手は埼玉代表・春日部共栄。
春日部共栄野球部はさほど古いチームではないという印象がある。
私が東京の高校生だった20数年前あたりから
埼玉の強豪のひとつとして頭角をあらわしてきたと記憶している。
不世出の速球ピッチャー・中里が輩出している。
県予選の決勝、市立川越戦の試合はとてもすばらしい一戦だった。
両校の意地がぶつかり合い、激闘と呼ぶにふさわしいものだった。
そして春のチャンピオン平安高校との本日の第一試合は
とても興味深く観ていた。
まさしく野球はピッチャーが、
勝敗の99%以上を決めるというのをわかりやすく示してくれた試合となった。
初回に5点差がつくという平安高校としてはいわゆる先発ピッチャーが
試合をつくれないという展開。
これにより、5点を取り返すという作戦をとらざるを得なくなるのだ。
しかし、あわてず攻める姿勢があれば、
その後どうなるかわからないのが、実力校というもの。
ところが、
攻め方が、春の王者という貫禄がなかったように思う。
なにも猛打がなかったとか、パワーがないとかではなく、
点をとる工夫が感じられなかったということだ。
確かに初回に5点を許してしまったので、焦り、淡泊な攻撃になりがちだが、
初回の失点は少しずつ返していけば追いつけるのだ。
2番手ピッチャーが
相手打線をピシャリ抑えるだけのチーム力があるのだから
1回ずつじっくり攻め、チャンスをものにしていくという王者らしい攻撃が
見られなかったのが残念だ。
春夏連覇を果たした興南高校がそういうチームだった。
興南も報徳学園に序盤5点を一気にとられ、苦しい展開になったが、
1点ずつ返す攻撃をし、必ずチャンスが来ると信じて、王者らしくあわてず反撃した。
その結果、ビッグイニングを作り逆転をしたのだ。
初回に5点をとられて王者はどんな戦いをしてくれるか期待したのだが、
相手にじわじわプレッシャーを与える王者らしさが見えないままだった。
守りはさすがだった。
王者らしい鍛えられ、落ち着いたプレーを繰り返していた。