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プレー解説、戦略思考の映像反復確認Ⅲ

茅ヶ崎高校・渡部が1,3塁で1塁牽制の間にホーム生還という光るプレーを見せた。スキをついたというより次のプレーを予想し、相手の動きを見逃さない集中した最高のプレー。

しかもリードされている状況でとても勇気のいるプレー。1,3塁の状況で牽制の間にホームへ突っ込むという作戦は、高校野球では割とオーソドックスになってきている。

この場合は左ピッチャーという条件の時、左ピッチャーが、ゆっくり脚を上げたら、牽制ありということでリードオフをとり、牽制した瞬間、3塁ランナーが突っ込む。

右ピッチャーの場合は、1塁ランナーが飛び出し、そのまま盗塁でもいいし挟まれて、3塁ランナーが突っ込むという作戦だ。

 

日本代表に清宮の名はなかった。

新チームが始動し、秋季大会が目の前のこの時期キャプテン不在となると早実は困る。

日本代表漏れの清宮は昨年の悔し涙の借り、アメリカに勝つリベンジはお預けとなった。

東京のピッチャーを打つより経験のない球を投げてくる海外のピッチャーの球を打つ方が日本野球の将来には有益とも思える。

ただ、今回はアメリカはいないので、国際試合での経験が有益とも限らない。

有限の高校野球でキャプテンとしてチームを引っ張る経験は人生の中ではとても濃い時間で

野球の技術の向上同様、有益な時間。人間の器を大きくし、考えること、感情を豊かにすることは

技術の向上にも生きてくる。

 
いなべ総合が8回の守りで見せたプレーはおもしろいものだった。

ゴロで抜けるセンター前ヒットでファーストがベースを離れてしまうのだ。
すると打者走者がスルスルと

オーバーランを大きくとる。そこへキャッチャーが1塁ベースカバーに入り、

センターからの返球を受けたカットマンが1塁へ送球し、刺そうとするものだ。

どうしてもアウトが欲しい場面での奇策に見えた。

 

このプレーを見て、連想するのが球が逸れたときのバックアップによるランナーの刺殺や

ワザと暴投をしてのバックアップによるランナーの刺殺だ。これは、日ごろから送球、

返球に対するバックアップの位置を練習する。

走者がどこにいるか、アウトカウント、ゲーム展開、送球の角度まで考えてプレーすると最も効果的だ。

バックアップする選手は、送球を受ける選手の背後の位置、距離を計る。

距離が近ければランナーが次の塁を狙わない、離れ過ぎると進塁を許す。

バックアップは、進塁を許さないとともにそのプレーでランナーを殺すプレーでもある。

受ける選手の演技も必要だ。

 

また、ワザと暴投する守備側のトラップ、ギリギリのタイミングにする走塁のトラップのように

ワザとやるプレーで割と一般的な技が、ワザとワンバウンドさせてゲッツーにするというもの。

東東京では関東一のキャッチャー・佐藤が東亜7回の攻撃一死1塁から送りバント小飛球を

ゲッツー狙いでわざと落としたが、ショートバウンドで捕球できずゲッツー未完成となった。

触れなかったのでファールとはなった。捕手の一瞬の判断としては難しいところ。

うまい捕手ほどこういうリスクのあるプレーも選択するが、それを失敗しても積極的なプレーだ。

このようなゲッツー狙いにできるフライというのは上に打ちあがる打球でそのプレーを可能にする。

内野フライやキャッチャーフライというものは、頂点から真下に落ちてくるフライになる。

そのため目を切らずに見ながら追っても落下点に着きやすく、そこで時間の余裕が生まれ、

プレーの判断ができることになる。だから、ワザと落としてゲッツー狙いなどもできる。

一方外野フライは、打者が打った打球が遠くへ向かって飛んでいく。

真上から落ちてくるのではなく、遠くへ遠くへ飛んで行こうとする。

この外野フライに目を切って追いかける外野手が甲子園に出る選手でもなかなかいない。

追いつけると思った打球がその先へ行くことがよくある。

だから、見ないで落下点と思われる地点よりさらに、その先まで飛んでいく可能性を頭に入れて、

その先を目指して全力疾走して、落ちてくるだろう時間にボールを見つめ直す。

これが外野手の技術だ。

岡田は、目を切ったがために落としたそうだ。

うまい選手が陥るミスとは言え、外野手は経験や慣れが名手にする。

捕ることなんて、いわばキャッチボールに過ぎないわけだ。

一歩目の判断、目を切れること。球際に強いことが名手だ。

 

バドミントンダブルスオリンピックチャンピオン松友は、野球をしていたお父さんに教えを受けた。

1つは「シャトルを指で打て」。実際の手はグリップを握るだけで、シャトルに触るのはラケットの先だが、野球でグラブの中の指が硬球をつかむように、ラケットの先に指があるよう意識して打つよう言い聞かせたそうだ。

同じように野球でもゴロを捕る練習に小さいグラブを使ったり、捕りにくいグラブを使ったりして手で捕る感触を養う。

腕は、胸や背中からすでに腕と捉え、カーブは肩甲骨を抜くイメージで大きく振る。など小手先だけでなく体全体を使ったプレーが速い球を投げられたり、強い打球が打てたり、遠くへ投げられたりという基礎体力技術を向上させる。

この夏、ベスト4で作新学院に敗れた明徳義塾。馬淵監督は、今年の春はおもしろいと言っていた。絶対優勝するとまで言っていた。その通り、秋は勝ち上がり、現在、高知でベスト4まで来ている。

その明徳は24年前、松井を5打席連続敬遠して一気にヒールとなった。たしかにあの時はランナーいない状況でも敬遠して、この戦いに意味があるのかと思った。

今の成熟した目で見るとおもしろい戦術だと思う。

高校野球は教育の一環を標榜している。教育の一環でなくとも、勝利を追求することは選手の人生に大きな教訓をもたらす。

そもそもスポーツは、勝利を追求することから成り立っている。その作戦を選手がどう捉えて、どのように遂行するかを考えて実行すれば、とても意味のある作戦だ。

今までやってきたこと目標を成就するために動き、そのために立てた戦術や作戦や方法を実践することは教育そのものだ。

今年、西東京を初めて制した八王子は清宮擁する早実とぶつかった際、1打席目から清宮を敬遠してきた。

その後、清宮に回る度にキャッチャーはベンチを見てどうするか確認していた。

点差が開いた場面のみ勝負に行き、基本、勝負を避けていた。選手がみな、初めての甲子園をつかむため執念、気迫、気合をもって大会通じ戦い、集中力が最後まで切れなかった。

絶対勝つ。という気迫でこの作戦も遂行してきたのだ。 監督の采配が冴えた八王子は大願成就した。

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