能代松陽と聖望学園の4回裏、聖望は無死1塁からバントが小フライとなった。
ピッチャーがショートバウンドで捕り、ファーストへ送球。
一塁手は先にベースを踏んでからベースについたままのランナーにタッチした。
これにより一塁ランナーは生きてしまった。
先にランナーにタッチしてからベースを踏めばゲッツーだった。
ここで解説者は「フォースの状態でないから占有権は前のランナーにある」と表現した。
確かに、先にベースタッチしたことでフォースの状態ではなくなる。
したがい、元からいた一塁ランナーは一塁ベースが安全地帯となる。
だが、「占有権」という表現は当てはまるのか。
占有権は2人のランナーが重なった時に使う言い方に思われる。
挟殺プレーが起きた時、二塁ベースや三塁ベースで2人のランナーが重なった場合、
占有権は前のランナーにある。
だから、この時、前のランナーにタッチしてもベースについているからセーフとなる。
一方、後ろのランナーはベースについていても前のランナーに占有権があるから
タッチされるとアウトとなる。
後ろのランナーは生きるためには戻って、タッチされる前に前の塁に戻るしかない。
こういう場合が占有権だ。
ではこの聖望学園のケース。
プレーは一塁ベース上での事だ。
ピッチャーがショートバウンドで捕った時点で、打者は一塁ベースへ向かうしかない。
この時点では一塁ランナーは二塁ベースより先にしか安全地帯がない。
ところがファーストが一塁ベースを踏んだことで一塁ランナーに一塁ベースに戻る資格が
与えられた。ちなみに二塁ベースへ向かってもいい。
一塁ランナーが一塁ベースへの資格が与えられたということは、打者がアウトになったからだ。
二塁、三塁ベースで起きる挟殺プレーでの占有権とは2人のランナーが同時に生きている状態で
の事を表現すると思われる。
一塁ベース上で2人のランナーが同時に生きている状態では一塁ランナーは二塁ベースにしか
生きる方法はない。
打者が死んだことにより戻る資格が与えられるということで、挟殺プレーで起きる
占有権とは違う。
したがい、一塁ベース上では占有権は存在しないと言えよう。