サッカーにはポゼッションという指標がある。
ボール支配率ということで、ボールを自チームでコントロールしている時間が長ければ、
それだけ有利に試合を運んでいる、と解釈することができる。
ポゼッションが高いチームが実力では勝っていると判断できるもの。
しかし、勝負はこれでは決まらない。
これが競技のおもしろさで、実力が勝っている方が勝つとは限らないということだ。
ポゼッションという概念が発生するのはボールをホールドするスポーツに特有の指標と思われる。
ラグビー、ホッケー、ハンドボール、バスケといった球を取り合う競技は
それを支配している時間が長いほど、得点をあげる可能性を高くするわけだ。
それに対して野球やテニスはボールを取り合わず、保持せず、解き放つ。
これはちょうどボールを取り合う競技のシュートと同じと見える。
バレーボールもポゼッションがあると言ってもいいだろう。
このボール保持について野球だけ特別な行為がある。
他のスポーツには共通しているのに野球だけ逆の行為になるのだ。
それはボールを保持している、つまり支配しているのは守りの時だということ。
ボールを支配することで得点確率を上げ、得点するには攻めるということだから
ボール保持は攻めなのに、野球だけボール支配は守りの姿勢だ。
ピッチャーがボールを放つことから基本はじまる野球は主導権が守り側にあり、
ボールに意志を込めるのを守っている方が行うという特殊性がある。
ポゼッションがないテニスでさえ、ラリーをコントロールするのはほとんどが攻めている側だ。
野球はボールを長く持っているのは守っている側。
というより攻めるチームは全くボールに触れない。
バットにだけ一瞬触っていいよ、というルール。
守っている側のボールの操作によって打者も走者も対策する。
ピッチャーの配球によって打ち方を考え、守備陣のフォーメーションや走力や肩によって走塁を決める。
ピッチャーは守りの一番の武器であるという位置づけになるが、ピッチャーは自分の意志を球に込めて、
自由に持てる技術を発揮する時間を与えられているので、他の競技から見れば攻めと言えよう。