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禁断の果実を手にした野球選手 再録

道具を使うスポーツはその道具の進化や規制によって、パフォーマンスはかなり変わる。

道具の介在が多い野球では、ボール、バット、スパイク、グローブの進化でプレーが変わる。

 

ボールでは統一球や飛ぶボールが、とても話題になった。

MLB仕様のボールはすべりやすいと言われ、国際戦ではボールの対応に苦労する選手が多い。

 

バットは、実績のある選手から良質の木を使えるそうで、その性能は違ってくることになる。

最近の金属バットは30年前と比べて雲泥と言ってもいいほど性能が上がっている。

 

スパイクは歯の位置を選手の体型、特性によって変えることができるようになり、
軽量化が進んだ。

 

グローブは大昔、片手で捕球することが難しいほど、今から考えれば粗悪なものだったが、

今は、選手一人ひとりの注文によってオーダーメイドできるほど、

それぞれ違う形のものを作ることができるようになった。

 

肘あてですら、それのおかげで恐れずに踏み込んで行けるようになり、

本来はケガ防止の目的だったものが、打者の成績向上に貢献しているかもしれない。

 

陸上界ではシューズの激変が起きた。

厚底の返発シューズだ。

 

マラソンで日本記録が続けて更新され、箱根駅伝では区間新が連発。

いわば、ドクター中松のホッピングシューズに通ずるシューズだ。

 

長距離走の道具と言えば、ほぼシューズに限られる。

そこでこれだけの改良、あるいは改悪がおきては、競技自体の変革になる。

 

野球はチームの勝敗を争う競技だ。

スピードボールの記録やホームランの記録はあくまで、勝利のための手段であり、

その数字の優劣はいわば、おまけにすぎない。

 

長距離走もレースとしての勝敗が絶対とは言え、勝敗そのものは記録で表される。

それが道具で生み出されているということになると、一考せざるを得ない事柄だ。

事が起きてから、禁止に向かっていたのでは様々な憶測が持ち上がって仕方ない。

 

そもそも、シューズに数値による制約はなかったのか。

ないのであれば、バネが入っているようなシューズもOKとなりそうだ。

あるのであれば、それを通過したシューズにより、

好記録連発が予想できなかったということになり、ルールの甘さ、陸連の甘さが浮き彫りになる。

 

同時にメーカーにも同じことが言える。

あらゆる実験をこなしてきたのだから、記録の飛躍的な伸びにつながることはわかっていたはず。

制約がないからという理由で、構うもんかと作り上げたのなら不誠実な部分を感じるし、

通過したのなら、売れ行きや評判を優先して、陸連との協議をおろそかにしたのでは、

という印象を持ってしまう。

これまた不誠実に思える。

 

ランナーはどうなのだろう。

驚異的な記録の伸びには、練習を重ねれば、試合前からわかることだし、

それによる記録更新に達成感はあるのか。

 

勝手に足が前に出るという表現をする選手もいるくらいの武器だ。

1億を掴むために禁断の果実に手を出したと見えてしまうのは否めない。

 

箱根駅伝はチームでの勝利のためにやっているので記録など関係ないとも言えるが、

驚異的な区間新ラッシュには、本当にそれでいいのだろうか、と思うことが自然だ。

 

いつもアスリートは無邪気な善者で、取り締まる機関は権力をかさにきた規制の権化

という図式がある。

 

むしろアスリートの方が、勝つためにという大前提があるということと、

光が当たるのが一瞬ということで、打算や邪がいっぱいある。

だって功績が後世に残るのだもの。

 

汗して、毎日必死にやっているのが世間に伝わり、スポーツ選手はさわやかのイメージがあり、

競技中の苦悩と感動があるので味方にされやすい。

 

テクノロジーは進化しており、それを否定することはできないという言い分もある。

確かに、その通りだ。

いつまでも道具を同じ仕様でやれというのも無理な話で、進化して当然だ。

 

じゃあどこからダメなのか、今までの人は不利じゃないか、となり、

この加減を納得できる形で制約しないといけなくなるわけだ。

 

勝ち負けだけに注目するなら、競技が面白ければいいということになり、

タイムが縮まる靴の開発は歓迎となりそうだが、

陸上競技は記録と切っても切れないのだから、道具次第で大きく変わっていては

大問題になる。

 

道具が多く介在し、道具に技術の多くを頼ると言っていい野球などはもっと大変だ。

さらに、球場の大きさに決まりがなく、人間の恣意で細かいルールがしょっちょう変わるのだから

個人の記録を比べるのは無理なはずだが、一旦数字で示されると、

強力な根拠になってしまうので他の要因を排除して優劣をつけてしまう。

 

そして、タラレバが常に野球談議には欠かせなくなり、思い入れや見方で自論の巷と化す。

逆にロマンとして、ファンを熱くさせもしてくれる。

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