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主力としての思考とは

前回、前々回で元ヤクルト・宮本の足跡と記録を振り返った。

 

足跡においては要所で挫折を味わっていること。

記録においては達成するにあたり、不利な条件が3つあったということ。

 

本日は、

先日テレビの宮本特集で放送された面白い話を紹介しよう。

 

宮本はレギュラーとしての地位が確定するまで、

ライバルとなる選手が活躍しないことを願っていたと赤裸々に証言していた。

 

「チームが負けろとは思わないが、ライバル選手が活躍せず勝てとは正直思っていた。」

 

とのこと。この考えは当然だ。

 

プロの世界で生き残るには、同じような実力がある人間がたくさんいる。

 

バッティングに秀でた選手や宮本のように守備に秀でた選手、

足が速い選手、肩が強い選手、小技が効く選手、長打が打てる選手などその特長はそれぞれだ。

 

その中でチームの編成上、必要な選手を起用していく。

 

そして毎年、

チームの編成に漏れれば戦力外を言い渡され、新戦力である新人や補強が行われることになる。

 

選手は超一流でもない限り、いつ首を切られるか明日にもその立場は保証されていない。

 

その環境の中で野球をやっていれば

呑気に楽しんでプレーするなんていうのは言っていられなくなるのだ。

 

野球選手も職業であり、ビジネスとして生き残っていくことを考えれば

自分の立場を優先して考えて当然だ。

 

ましてチームの仲間といっても、そこに集まった人間はたまたま同じチームになっただけであり

親族でもなければ昔から目的を一緒に向上してきた友人でもない。

 

この仕組みと人間の感情からしてライバルには失敗してもらいチームが勝ち、

自分にチャンスが巡るよう願う気持ちになるわけだ。

 

そして、曰く

「チームのことを考え出したのは、レギュラーになって数年たってから」

と語っている。

 

これも非常に理解がしやすい話だ。

 

組織において自分の行動、結果がその成否を左右する立場になってこそ

全体を考えるようになるものだ。

 

そのうえで、ファンに喜んでもらうために何をすべきかを考えたり、プロの世界だけに限らず

底辺である子供の野球からピラミッドになっている野球界全体が盛り上がるために、

一流のプロとしてどうやって世間にアピールし、一人の選手としても野球界全体としても

プロデュースする行動を考えることになるはずだ。

 

そして

自分の実力が劣ってきたことを知ったとき、あるいは将来有望な若手が現れたとき、

組織の発展を考えて自分の地位を譲ることを考えていくことになる。

 

私も10代の若手から40を超えるチームでプレーしているのでこの気持ちがよく理解できる。

 

勝つことが最も優先される勝負の世界においては自分が野球を楽しむためにプレーをするより

チームの機能と発展のために身を引くこともプレーヤーの責任になっていくのだ。

 

宮本も晩年になり

有望な若手である川端に後継とすべくその経験を伝授し、地位を譲る行動をしていたようだ。

 

「あの時点で川端に負けているとは思わなかったが、俺を引っ込めて出ている意味を考えてほしい」

と発言している。

 

実力が劣っていなくとも将来につながると思えば、あえて譲ることで、

また譲られた方はその意味を考え、その立場を超えていこうとすることで

チームも球界もレベルが上がっていくことになる。

 

チームを長く牽引してきて若返りを図ったチームにおいて優勝を経験する唯一の選手であり、

チームを脇役として支えてきた宮本ならではの言葉として大変興味深いものだ。

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