球の速さやピッチャーの調子を知るためスピードガンに頼る。
というより実況や解説など実際にグラウンドに立てない、打席になどもってのほかという
当事者でない者は、スタンドからや、映像で見ることになる。
すると、実際には球のスピード感や球質を体感することはできない。
そこでスピードガンによる判断に頼りがちとなる。
球質というものの例をあげると
塁間くらいの距離で、並んでキャッチボールをするとする。
本気で投げず、キャッチボール程度の投球だ。
同時に投げて向こうにいる相手に到達する時間が一緒とする。つまり、スピードは同じなのだ。
ところが、ここに球質の違いというものが存在し、片や、ボールがおじぎして相手に届き、
片や球道そのままに、おじぎせず相手に届く。
スピードが同じなのに凡人が投げる球と秀才が投げる球では、捕る位置が違ってくる。印象も違う。
これが球質の違い。おじぎをしない球質をもつ選手は、伸びているように見える。
いわゆるホップする球というやつだ。
このようにおじぎしない球質をもつ選手がショートをやった時に、3塁線を破り、レフトフェンスまで
到達した打球に対して中継に入り、バックホームする。
本気の返球に腰を入れ、腕を振り切る。この時のバックホームはサードの頭の高さよりちょっと
上くらいの球道を見せる。そして返球は失速することなくキャッチャーのミットに届く。
実際には失速しているし、ボールは上から下へという軌道を描く。
だが、この高さで投げれば、この辺で落ちていくだろうと思われる地点を越えて、真っすぐ
進んでいく球筋に失速していないように感じるのだ。
こういう送球を目の前で見せられると、敵味方関係なく、「オーッ」と感嘆の声が漏れる。
やれ、誰の球が一番速かっただとか、スピードガンがあれば160㌔超えていたとか言うが、
球速そのものじゃない。その球質であり、打者が伸びて見える球が打者には速い球として
印象に残るのだ。
スピードガンは参考までだ。
あれ、速そうに見えるけど、たいして出てないんだな。とか、
あんなに振り遅れているのに球速表示はたいしたことないな。とか、
150キロだけどバッターに振り切られているな。とか、の判断の参考として用いるのがよい。
そもそも140キロとか150キロとか、どんなスピードかわからないはずだ。
150㌔のスピードを生活の中で見ているわけではない。140㌔も130㌔も。
身近にあるのはせいぜいが、オートバイや車のスピードくらいだろう、意識できるのは。
それと、打席での投球と比較できようか。イメージがあまりにも違う。
それは、擦り込まれたものだ。
「160㌔出すなんてはえ~」などと感想を漏らす者も実際にプロの球はおろか、
高校生の速い球すら打席で見たことがない人が言っている。
子供のころからスピードガンに慣れ、テレビや新聞の報道の仕方に洗脳を受けたと言える。
そして、スピードガンが瞬時に表示する数字が正確かはわからない。
実際のスピードより5㌔くらいの差があっても、正しいのかどうかもわからない。
200㌔を表示したら誤計測で済まされる。出ていたかもよ。
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