これまで98回大会の名選手を紹介してきた。
最初に作新学院・今井のみをとりあげ、次に東京、神奈川、埼玉の将来性豊かな選手たちを
紹介した。
今日は、最後に全国の選手を厳選に厳選を重ね紹介したい。
98回の甲子園では、優秀なサウスポーがよく取り上げられた。
日本代表でMVP級の活躍をした広島新庄の堀。
甲子園初戦の関東一高戦での快投を見たとき、高校生では相当なレベルと思い、
国際戦ではBIG3よりも木更津総合の早川と共に信頼していいピッチャーと思っていた。
関東一高の3,4番の米田と佐藤は東東京大会では、3度のサヨナラ勝ちにからみ
勝負強さを見せつけてきたが、堀には全く対応できていなかった。
東京の強打者2人を手玉にとった堀の特長は、思い切った腕の振りから繰り出される
真っ直ぐと切れるスライダーだ。この二つの組み合わせで高校生の左バッターはまず打てない。
そして、甲子園ではその堀に勝った木更津総合のサウスポー・早川。
両左腕の見ごたえのある投げ合いだった。
堀と早川はタイプが違い、堀は体が小さいものの力投タイプ。甲子園でも力で抑え込んできた。
早川も球が速いが、力を込めて速い球を投げ込むのではなくコントロールが良い。
甲子園のマウンドを何度も経験しているので恬淡と投げ、高校生としては最高峰に位置するクレバーなピッチャーだ。
早川は、1年生の時、外野をやっていたが、ピッチャーをやらせてくださいと直訴して、
2年生の頃からエースとなったそうだ。
その早川も連投の疲れからか作新学院戦ではホームラン2本を許してしまった。
木更津総合はチーム力は高くないので今井から得点することが難しかった。
早川の好投で接戦に持ち込みたかったが、作新の力にねじ伏せられた格好となった。
表情を崩さなかった早川の目にも涙。日本一になると言っていた夢はついえた。
早川のピッチングはこれぞピッチャーというものだった。
樟南のエース浜屋。
浜屋は、日本代表に入ってこなかったが、選ばれてもおかしくない力量のある投手。
堀、早川、浜屋の3人とも球が速い好投手。
そしてサウスポーでは控えのピッチャーにもエース級がいた。
樟南の10番畠中は、高校球界でもトップレベルのエース級だった。
きれいなフォームで腕を振って投げ込みコントロールも良いピッチャー。
履正社・山口も寺島の陰に隠れ、登板機会に恵まれなかったが速球を投げ込む豪快な投手。
それから投手陣が豊富だった秀岳館の11番2年生サウスポー田浦は、秀岳館の投手陣では
一番出来がよかったように映った。
準決勝の北海戦ではピッチャーの順番が替わっていたらまた違う展開の試合ができたろう。
クールに投げていた田浦も敗れてこらえきれず、涙していた。
それをキャプテンの九鬼が「俺達の分まで優勝してくれ」と肩をたたいていた。
そして、宿舎での食事では、九鬼がご飯を田浦の口にほおばらせていた。
「これが、俺のお前への期待だ。」と言っていることからも
田浦の能力の高さを日本代表で4番を務めるキャプテンも認め、エースとして
全国制覇してほしいという気持ちなのだろう。
常総学院・鈴木もずっと注目されていたサウスポーだ。
中学時代から日本代表として投げ、常総では1年生の時から投げているが、
U-18では日本代表にはならなかった。
ハイレベルの野球をやる常総のエースらしく、マウンドさばきが良く、抑揚、緩急の投球術を
もっている。特に、印象深いのはシュート。右打者の外にストライクコースから軌道を動かし、
空振りをとったり、ミートさせなかったり。うまい。
野手では一塁ベース上で接触があり、怪我をした明徳2年生3番打者西浦は懐が深い。
呼び込んで打てる好打者で、明徳は馬淵監督が新チームに手ごたえを感じており、
春は絶対優勝すると言っているほどなので、そこの中核を担う西浦は、期待が大きいだろう。
北海のセンター鈴木の守りがうまかった。
うしろの打球に目を切って追える選手がほとんどいない高校生の中では
鈴木の動きならきわどい後方の打球にも追いつく守備力があるだろう。
常総学院はレベルの高い野球を展開するが、その扇の要であるキャッチャー・清水が
肩がいいだけじゃない巧みな送球を見せていた。
木更津総合2番・木戸が堀から高めの球を上からたたいたホームランは
最近の大柄の高校生が打つホームランとは違いよかった。
北海ショート小野の守備は今大会で一番目につく守備力だった。
あと、甲子園には出られなかったが愛知県の栄徳高校・温水は
アンダースローから強豪相手に工夫していて興味深い印象があったので付記しておく。