球の出し入れという専門用語。
コントロールの良いピッチャーの特徴で、特に球威がないピッチャーに見られるこの技。
簡単には、出し入れとはストライクをストライクコースへ、ボール球をボールコースへ意図して
投げることを言う。
球威がないピッチャーに見られる理由は、ストライクコースだけに投げていては打たれてしまうので、
ボール球を使わざるを得ないから。
球威だけでも抑えられるピッチャーはどんどんストライクコースに投げて行き、空振りをとったり
フライを打たせたりで打ち取ることができるので、ボール球を投げる必要がない。
江川は典型的な球威のあるピッチャーで、いわゆるパワーピッチャーだった。
球種はストレートとカーブだけ。それでも浮き上がるといわれた真っ直ぐをストライクコースへ
どんどん投げ込む。バッターは、それを空振りしてしまう。ボール球が必要ないのだ。
落合は、「真っ直ぐとわかっていて空振りするのは江川だけ。」と発言していた。
その江川は、たしか佐々木のフォークだったと思うのだが、
「すごい球と言っても見逃せばボールなんだよね。」
江川は真っ直ぐをストライクコースに投げ込み、相手がそれと分かっていても空振りをとる、
あるいは手を出さなくともストライクなので、投げれば江川の勝ちとなる。
佐々木の場合、フォークボールは見逃せばボールになってしまい、
相手が振ってくれないと佐々木の勝ちとはならない。
なので、見逃せば打者の勝ちとなる球は、本当にすごい球とはならないことを示唆した。
江川のような特別な球があれば、ストライクコースで勝負できる時代があった。
技術が発達し、情報研究が盛んな今の野球で、ストライクコースだけで勝負するのは不可能となった。
というより、ストライク以外を駆使して勝負するところに野球の面白さがある。
つづく。
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