高校野球で起こる大物食いは一発勝負のトーナメント戦が最大の要因だ。
もうひとつの要因が実力差はあっても同じ高校生で戦うということ。
どんなに名門校でも生きてきた時間は一緒。
同じ高校生が同じ時間だけ過ごした高校野球部生活の中で戦うということが
実力差を逆転させることを起こさせる。
そして高校生活の中で逆転できなくとも、そこだけで野球人生は終わらない。
志のある選手はその後でも若い成長期を経て追いつき追い越すことはいくらでもある。
阪神の石井は昨年、高専卒では初めてのシーズン勝利投手になったそう。
高専はその名の通り専門の高校で5年制だから卒業すればその専門の道へ進むことが多い。
というより、そのためにその学校を選択するのだから、当然、そういう道を選ぶ。
石井も将来の専門職を睨み高校を選んでいる。
当然チームは強くない。
そして、4年生からは高校野球部員として試合に出る資格がないから
活動には工夫をこらすことになる。
就職内定も受けるまでになりながら、5年間の活動でプロを目指す気持ちに変わったそうだ。
高校時代は2年数か月という極端に短い期間での勝負になるので、
やりきれないまま退場することがほとんどだ。
その一方で成長期のこの時期は、極端に短くとも体も技術も一気に伸びる。
高校野球で勝つためには体格、情報、経験。
練習量では決まらない。
この3つが不十分であるがため、下克上どころか好勝負すら達成せず、
退場する高校生がほとんどなのだ。
こうしてやり残したと感じたり、まだまだやるべきことがあると感じたり、といった
志が芽生えた選手が次のステージで高校時代に果たせなかった下克上に向けて動き出す。
その時の第一条件は体力、体格となる。
情報、経験は一旦リセットされるので次のステージで吸収することになり、
まず相対できる体が必要となってくるわけだ。
運動神経の良い、センスあふれる高校生が一生懸命練習しても、
体格の良いプロのレベルにはいかない。
結局、体格がなければ技術を獲得できないし、体格や体力があるから技術も伸びる。
運動神経やセンスでは実は勝っていても、勝負では負けてしまうのだ。