走ること不要論はそもそも野球選手が長い距離を走ることを苦手とするからだ。
野球選手に必要な肉体、筋肉、体質が長い距離に向いていないから。
逆に言えば、長い距離が得意な体では野球選手は大成しない。
野球選手に必要な体つきは、まず、でかい体ということ。
パワーがものをいう野球という競技では、体をでかくする。
この、体をでかくする素質として、速筋が必須となる。
この体質の人は体が横に大きくなりやすく、そして瞬発力に優れた身体となる。
瞬発力を要する野球では、長距離を走るに適する筋肉より、
瞬発力を出す筋肉を持つ者しか一流になれない。
野球選手にとって優秀な筋肉、体格は、長距離を速く走られるようでは、だめなのだ。
そして大きいものを移動させるにはエネルギーがいる。
大きな体を移動させるには多くのエネルギーを要し、それを長い時間続けるのはしんどいのだ。
マラソンランナーは細くて小さい。
その方が移動させるには楽だから。
故にタイムを速くできる。
マラソンランナーは細くて小さいから速いタイムで移動できるし、
速いタイムで移動を繰り返すから細くて小さくなるとも言える。
こういう人は遅筋体質であり、大きい体にはなりにくい。
野球選手には向かない体質を最初から持っているのだ。
野球界のスター・大谷もソフトボール界のスター・上野も長い距離を走ることは大嫌いと言っていた。
長い距離を走ることが大嫌いの方が野球をやるには優秀な体質なのだ。
スポーツ新聞にキャンプ情報で数キロのタイムトライアルの練習を伝える記事があり、
若い選手ばかりで争っているのに、最も優秀な選手のタイムが運動好きな一般の人より
タイムが遅いということがあった。
日頃から走ることを趣味としているような人たちは、そういう記事を読むと、
アスリートであるはずの野球選手のタイムの遅さに信じられないという感想をもらす。
高校時代、名門校で厳しい練習をしてきた一流の野球選手が、
そんなタイムなのかと信じられないのだ。
しかし、むしろ長い距離を速く走る野球選手は野球の実力がないことを意味するので、これでいい。
ヤクルトキャンプで12分間走というトラックでのトレーニングが行われ、
ルーキーだった奥川がトップの3、375キロを記録したことがあった。
12分間という最初から決められた時間の中で、どこまで距離を延ばせるか、
というトレーニングになるわけだが、ということはキロ約3分33秒ペースとなる。
4年前の箱根駅伝、1区最初の1キロのペースが3分33秒だった。
これは信じられないほど遅いペースと話題になった。
ジョギング並みの超スローペースだ。
20KM程を走るのに箱根ランナーにとっては、このタイムは超スローペースであり、
ジョギング程度のペースなのだ。
ところが3KM程度しか走らないトレーニングでの優秀なタイムとなってしまうのが野球選手なのだ。
ダルビッシュはトレーニングと栄養摂取で大きな身体にすることを選んだ。
今はひところより絞ったようだが、今の大谷より背丈も肉厚もあった頃があった。
走り込み不要論を掲げたダルビッシュの選択はそもそも長い距離を走ることが嫌い
ということがあったと思われる。