スライディングは足から行く場合は、左足を折るスタイル(右足がベースに触れる)と
右足を折るスタイル(左足がベースに触れる)があり、右利きの人は、左足を折って
スライディングすることが多い。
右足を折ってスライディングは、左利きの人が多い。
走塁は左回りなので左足を折ってスライディングをした方が送球が逸れた場合など、
次の塁への一歩が切りやすい。
逆に右足を折る場合は、盗塁した時、送球がそれても顔に当てず背中に当て、
怪我を防ぐ効果がある。
スライディングの多くは、最後に地面と接触した足の方を折って、反対の足を伸ばす。
つまり、11歩でスライディングに移る場合は、左足が11歩目なので
地面に最後に着いた左足を折り、右足を伸ばし、右足が触塁する。
12歩なら右足を折り、左足を伸ばし、左足が触塁するということになる。
それは地面に触れている足の方が、地面と近いわけで体を沈めやすいからだ。
逆に、浮いている方の足を折るには、地面と距離がある分、ジャンプする格好になりがちで
おしりが地面に着くまで時間ができるのと体に衝撃を与えるので、あまりこれではやらない。
元巨人、鈴木は左足を折ってスライディングするスタイルだった。
鈴木は、盗塁では11歩を基本としていたが、歩数が合わず、12歩を要した場合は、
最後に着地した右足を跳ねる形で飛んで、スライディングしていた。
右足を折ってのスライディングができないのでこうせざるを得なかったのだろうか。
ところで、鈴木は走るためだけに出てくることが多かったのに、その際
ヘルメットの耳当てが右についているものを被り出てきていたのはなぜだろう。
キャッチャーからの送球は常に左から来るので、左の耳を保護した方がいいだろうし、
外野からの返球の方が当たる可能性があるからとしても、その送球は威力が劣る。
左打ちだから自分用はそれしかないからということか。
さて、スライディングは何のためにやるか。
それは、全速力で走り込み、オーバーランを避けるため行う。
立ったまま触塁しようとすると、どうしてもベース手前でスピードを緩めないと
オーバーランしてしまう。
減速してスタンディングで触塁するよりはスライディングした方が
早く触塁でき、減速加減が抑えられるということだ。
走り抜けた方が早いが、クロスプレーの時、二塁、三塁でオーバーランをしては
アウトになってしまう。
ベースでピタリ止まらなければいけない。
スピードに乗ったままベース上でピタリ止まるのは不可能なので減速したい。
立ったままスピードを緩めると減速の量が大きくなってしまうので
スライディングという方法をとり、なるべく減速を少なくしてベースの上で
止まるようにしているわけだ。
つまりスライディングも減速する行為なのだ。
三塁打の時、一塁でスライディング、二塁でスライディングをしている選手はいない。
そのまま、駆け抜けて行った方が速いから、
減速する行為であるスライディングをしないわけだ。
ベースでタッチプレーが行われる時に、できるだけ、早く、触塁するために、
なるべく駆け抜けに近いスピードにする技術が
減速するスライディングという行為と言えそうだ。
昔は、スライディングはケツで滑れとよく言われた。
ケツで滑った方が、よく滑り、長い距離を稼げるから。
それからケツは肉厚があるので痛くなく、ケガがしにくいから。
だから、スライディングパンツはケツを保護するように作られている。
しかし、スライディング期間が長いと走行期間が短いことになり、
減速期間が長くなる理屈だ。
そしてケツで滑るには立った状態から座った状態にまで体を低くする作業がいる。
作業が多くなれば、時間がかかるわけだ。
ということは、ケツで滑るということは触塁するのをなるべく早くするという命題に
反することになると言えそうだ。
今では、ケツで滑るよりも特に、盗塁はなるべくベースの近くで立った状態に近い、
膝と脛を使って滑り、ベースへドーンと突っ込み、ベースごと刈り取るような
スライディングが最も到達が早いとされる意見が多くなった。
ただ、この方法は足に負担をかけ、怪我のリスクが高い。
イチローは盗塁した際、ケツがまったく汚れなかった。
そして、膝で滑ることですぐ立ち上がる事が出来、すぐ立ち上がるということは、
もうベースにはとっくについていますよ、というアピールになり、
本来アウトかセーフか微妙なタイミングでも、セーフに見せることができる。
審判がセーフと言いたくなるわけだ。
さらにベースのほんのちょっと手前で立ち上がり、
もうそこでベースに到達していますよ、という目くらましの技術もある。
立ち上がりながら少し進み、立った時にベースに着く技術だ。
まだ、ベース到達していないのに、
その手前で立ち上がる動作をしているのでもう、ベースについているかのような
錯覚に陥る。
これをするために、ひざで滑り、ドーンと当たって行くようなスライディングが
うまいとされるようになった。
ただ、リクエスト制度のおかげで目くらましの技術も通じなくなったので、また新たな技術を模索している。