私が中学生くらいの頃、スラムダンクの人気が爆発した。
バスケ素人の身近の友人も、
スラムダンクに影響され高校でバスケ部に入部した。
全国でこういう中高生が増え、バスケ部に入部する人間が増えたと記憶している。
私は、スラムダンク連載中はこのマンガを読むことがなく、
その人気のさなかにはいなかった。
その後、連載が終わった後、
手に取ったのだが、一気に読み込み、何度も読み返したものだ。
スラムダンクと北斗の拳がマンガの超名作として私の胸に刻まれている。
そのスラムダンクの数ある名言の中のひとつ、
「勝利より優先されるものはない」
劇中ではヒールとして描かれた豊玉高校の発言であり、
言葉だけみればフェアプレー度外視の
なにやってもとにかく勝つことが優先されると取られがちだが、
スポーツとは勝利を目指してやることが大前提だ。
ここでいう勝利優先とは一般的に使われる勝利至上主義とは違う。
勝利を大目標に置き、常に勝利を目指す中で
記録やエンターテイメントが後発的に発生するということ。
何をしても勝てばいいという意味ではない。
数年前、中日が日本シリーズで落合監督がパーフェクトの山井を代えたのも
53年ぶりの優勝を優先したからだった。
この時、山井は自ら9回の守りが始まる前、
ベンチで「もう無理」と伝え、「岩瀬で行って」と言ったそうだ。
責任は落合が全てかぶると。
試合後、そのことに質問が集中しても、
落合は山井はけがで、あれ以上投げられなかったから仕方ないというコメントはせず、
勝つために最善の策を打ったとしか言わなかった。
その非難がきても勝敗と選手起用に責任をもつ監督ならではの発想と
落合の実績に裏打ちされた達観した野球観がなせる業と思う。
選手は勝利以上に記録や個人のプレーを優先することが出てくる。
それは仕事であり、選手生命がかかっているので当然だ。
しかし、監督をはじめとする首脳陣は勝つことを大前提に動く。
勝利を目指してやる中で、ファンを魅了するプレーや
子供があこがれるプレーが起き、負けても得られる人生訓が発生する。
しかし、これはあくまで結果であり、目指すべきは勝利。
勝ってこそ喜びがあり、面白いのであり、
技術の向上がなされ、スポーツ文化が発展する。
負けたらその悔しさから、次は勝つと不屈の精神が養われ
また勝利を目指し精進する。
勝利より優先されるものはない。