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野球誕生時想定していなかった敬遠という作戦

野球のルールは複雑だ。

やっている選手も知らないことがあったり、間違えて覚えていたり、といったことがある。

プロ野球選手とは野球の専門家だ。

ただ、野球勝負の専門家であり、野球技術の高等者であり、司るルールの専門家ではない。

だから、プロ野球選手でもルールを知らないことはよくある。

高木豊はファールグラウンドを守っていてはいけない、というルールを

知らなかったということを動画メディアで露わにしてしまっていた。

さすがにこれには驚かされた。

昔、ヤクルトのキャンプでルールについてのテストを行ったら、

野村監督は満点という記事をスポーツ新聞で目にした。

さすがだ、という感想を持ったものだ。

最低点は長嶋一茂だった。

さすがだ。

複雑なルールゆえに、審判の判断にかかる比重が大きくなり、その中で慣習が生まれる。

ハーフスイングやスリーフットラインオーバーは明確に決められない中で慣習により、

だいたいで決定されているように思われる。

最たるものはストライクとボールだ。

ベース盤の上を打者の胸から膝の間で通ったかどうかをキャッチャーの後ろに立ち、

一瞬で肉眼により判断するという、とても難しい業だ。

一瞬で一人が判断しなければいけないこの方法は間違えて当然でありながら、

ストライクとボールの判定は一番多い審判の仕事だから始末に悪い。

きっとここにもゆくゆく機械の手が加わるだろう。

そして同じルールでやっているはずなのにレベルが下がるほどストライクゾーンは広くなっていく。

高校野球のストライクゾーンは恐ろしく広い。

リクエスト制度はすっかり馴染み、おおむね好評だ。

最近では他にコリジョンルールの導入、申告敬遠導入などもあった。

複雑なルールゆえ、手が加えられることがよくある野球なのだが、

その中で申告敬遠はあくまで派生のものと言えるだろう。

野球誕生の時、ルールの下で敬遠というものを想定していない。

ゲームをしていくうちに戦略として生まれたのだ。

もともとは、野球は打者の打ちやすい球を投げ、両チーム打ち合い、得点を競うゲームと聞く。

そのうちに、ピッチャーの力量という要素が加わり、ゲームの方向が変わった。

そうして生まれたのが打者と勝負しない、避けるという敬遠だ。

たとえばホームランというのは外野に制限を持たせないとグラウンドを広く用意しなきゃいけなく、

土地の制限があろうからフェンスで区切り、それ以上の打球はその時点でホームラン、

つまり得点とする、というルールにした。

どっちみちそんなに遠くに飛んだ打球を追いかけて行って、拾ってバックホームしたって間に合わないから、

もうその時点で得点としよう、また、区切りを持たせなければ、外野は大きな打球に備えて

100メートルも150メートルも後ろに守るようになる。

すると外野がガラガラに空き、ヒットゾーンが広くなる。それに備えて内野手が下がれば、

内野ゴロアウトが生まれない。

じゃあ守備の人数を増やしてやるか、とか考えた結果、外野に区切りを持たせよう、

ということになったのではないか。

そしてそこまで飛ばすのは打者の圧倒的勝利であり、それはスポーツ、競技としての美しさだから

最大の褒美を与えようとした。

それがホームランという賛美であり、その時点で得点という褒美だ。

これにより外野フェンスの外に観客が入ることができるという利点も生まれた。

さらに、ホームランのために設けたフェンスの外へ今度は、フィールド内でワンバウンドした打球が

弾んで入ってしまうという現象も生まれた。

フェンスの向こうには追いかけていけないからこれはツーベースヒットにしよう、

ということでエンタイトルツーベースが誕生した。

このように、自然な流れでルールが整備されていったと思われる。

敬遠もどうせ一塁が空いていて、強打者なら歩かせた方が得策だという守備側の知恵だ。

ゲームを重ねていくうちに生まれた作戦、戦略としての現象だ。

では、申告敬遠は。

次週へ。

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