私は今年、不惑の域に入るのだが、
私の年齢周りの選手が本当に少なくなってきた。
ゴジラが引退し、先日は二岡が寂しく引退。
そして今、現役の井口や井端や松井稼もそろそろ限界が見えている。
イチロー、小笠原、高橋由なんかは限界には思えないが、
苦境に立たされている。
おまけに昨年はベッカムが引退した。
そんな中、私と同い年の陸上・室伏はなんと、昨年までの日本選手権まで19連覇と。
それも他を寄せ付けず。
室伏も今年40歳を迎えるわけだが、ハンマー投げという絶対的に基礎体力がものを言う競技において、
何年も自分より若い連中を退けてトップで居続けるのは驚異だ。
19年もの間、日本選手権が開催されるとき一瞬でもけがをしていれば成し遂げられないからね。
一意専心と自己管理の賜物だ。
きっと。
われわれ観る側はそのパフォーマンスと結果でしか判断しないが、
その裏には毎日の節制や管理がものをいうわけだ。
けがをも抱えている体かもしれない。
その上でのこのパフォーマンスだ。
いろいろ犠牲にしていることも多いんじゃないかと想像できる。
世界のトップで活躍するハンマー投げの選手で体重が100キロを切っているのは室伏だけだそうだ。
(最近は超えたかもしれないが)
それだけ体の潜在能力が高いことをうかがわせる。
(技術も卓越しているらしい)
室伏の身体能力の高さを示すエピソードは、数多くある。
やり投げ経験のないまま出場した大会で入賞してしまったり、
100mはあの大きさで10秒台。
30mならウサインボルトを上回るスピードで走っていたこともあると
武井壮が言っていた。
また以前プロ野球の始球式を行った時にはスピードガンで130キロ以上を指していた。
その投げ方はまさに素人でアーム式と呼ばれるもの。
アーム式とは下半身、上半身、腕が一緒に動いてしまうもので良くない投げ方のこと。
投球はまず、下半身が移動し、そのあと上半身がひねられ、肩→ひじ→手首の順で出てくれば
パワーが伝わり速い球が投げられるのだが、
野球をやっていれば、まずこの投げ方はしないアーム式の投げ方であるにもかかわらず、
そこにいるプロ連中一同を驚かせた。
あの体で本格的に投げ方を会得したら
もしくは打ち方を会得したらきっと名選手になっただろう。
今、室伏は競技者としての境地に達したように常人ではわかりえない練習をしている場面を
よく目にする。
投網をしたりイメージトレーニングに時間を費やしたり。
ひとつのジャンルに専心し、その極みに達していると思われる人は、
よくその専門のこと以外を研究することで、あらたな感覚を手に入れ、
専門分野に生かしていくという話をよく耳にする。
室伏もその境地なので、凡人には理解しがたい練習を取り入れているように思う。
まだまだ室伏の可能性を楽しみたい。