千賀の移籍が決まり、育成出身では初のMLBプレーヤーの誕生となる。
育成出身と言うのは不遇の時代から、あるいは大きな努力から、という印象を与え、
その出世ストーリーが共感を生む。
しかし、千賀の場合は高校生で育成ドラフト指名されている。
高校生がプロに指名されれば、たとえ育成であっても十分な野球エリートだ。
千賀は県立高校で甲子園不出場だからなおさら不遇や努力という印象になるが、
逆にそうであるからこそプロからその才能を認められたという事実は、出世を順調だったという
見方にもさせる。
一方、同じMLBプレーヤーの上原はドラフト1位だ。
ルーキーイヤーに20勝をした類稀なピッチャーだが、高校時代は控えのピッチャーだった。
そして、大学も野球推薦で行ったわけではなく、一浪して合格したのち野球部に入っている。
一浪中はアルバイトと受験勉強とトレーニングで最もつらい時期だったそうだ。
このつらい19歳の時期をいつも糧にするために背番号19を選んだそうだ。
その大学も先生になるために進学している。野球で立身するためではなかった。
育成出身の千賀とドラフト1位の上原をその字面だけで捉えれば上原がエリートとなるが、
這い上がって来たのは断然上原だ。
育成出身という冠がついた途端、シンデレラストーリーのようだが、上原の方が断然、成りあがり者なのだ。
19歳に戻り、2人の将来展望を比べた時、上原は自身でも信じられないストーリーが待っていた。