プロの世界は毎年、何人もクビになり、それに代わって新人入団と補強が行われる。
チームを強くするために行われるこの繰り返しも既存の選手にとっては
自身の身に影響するので嬉しいこととは限らない。
むしろ、喜ばしくないことの方が多いだろう。
出場機会が減ることになり、それは収入が減ることであり、ゆくゆくは仕事を失うことになる。
大概の選手にとって優勝することと、選手生活が長いことだったら
野球選手でいることの方が大事なのではないか。
ということは優勝などしなくていいから、選手を補強しないでよ、ということが本音となる。
その分、自分が頑張って優勝できるよう貢献するから、と。
しかも多くの選手が、俺ががんばれば、きっともっともっと実力をあげられて
チームのためになると信じている。
それは、クビになってもトライアウトを受けたり、トレード志願したり、ということからもわかる。
FA元年、最初に行使したのは落合だった。
選手会が勝ち取ったFAを選手会から脱退していた落合がいの一番に利用した。
こうして巨人にやって来た落合を他の選手は歓迎したのだろうか。
駒田は守るところがなくなる、と落合が来たことで巨人を抜けた。
その落合も清原が加入することで巨人から抜けた。
FAでチームを去る場合は裏切りという印象をファンに与えるものだ。
そのチームを応援しているファンからしたら、
「なんだよ、うちのチームで優勝をめざすのがいやなのかよ、うちのチームでは優勝できないと思っているのかよ、そんなにうちが嫌かよ」
という感情になる。
新井が広島を出る時、涙を流しながら会見していたが、自分から出て行くくせに
何で泣いているのか、多くの人が理解できなかった。
トレードの場合は、その選手の意志じゃないから
今度はその選手の味方をする。
悪者になるのはチームフロントとなる。
ファンはその選手に対して、今までありがとう、と送り出し、対戦でまた本拠地に戻ってくると
拍手や声援で歓迎する。
あなたの意志で俺達を裏切ったわけではないから仕方ないよね、
敵になるけど一緒に頑張ろうね、という気持ちだ。
戻った本拠地でヒットを打ったとして、自チームの不利になるにもかかわらず
拍手を送ることもあるくらいだ。
代表戦になると、プロと言えど勝利以外、目指すものはない。
明日へ。