毎日野球コラム - 野球コラムサイト -

ザ・プロフェッショナルの意地 再録

今夜、お伝えするニュースが山ほどあるんですが、」

と前置きしながら、野球放送を続ける英断を下したニュースステーション。

 

「どんな番組になるか今夜わからないのですが、伝えるニュースもいっぱいあるし・・助けて下さい」

とした、天才・久米宏。

 

二塁に大石を置いて新井の打球は三塁線を襲うが、水上が横っ飛びから一塁で刺すと

「ディス イズ プロ野球!!」と実況が叫ぶ。

攻守交替の際に、スタジオに戻ると久米宏が

「ディス イズ ニュースステーションでございます」

 

10.19、ダブルヘッダー第二試合目。

二試合目も接戦となり、この川崎球場の興奮を伝えようと、急遽全国放送が

始まった。

 

7回裏に飛び出したロッテ・岡部のホームランには

「ロッテもプロです。ザ・プロフェッショナルの意地」と実況が伝えた。

 

そして同点で迎えた8回、ブライアントの勝ち越しホームランが飛び出すと、

三塁側ベンチ前の近鉄ナインは大喜び。

またしても、中西ヘッドコーチがブライアントをホームベースで迎える。

 

勝ち越した近鉄は、8回の守りからエース・阿波野を一試合目同様、投入する。

テレビの方は、CMカットで放送するという、異常な状況となった。

すると、8回、高沢のホームランでまたも、同点となる。

 

9回裏、バント処理をミスした近鉄は無死一、二塁としてしまう。

ここで、後世に語り継がれるプレーが起きた。

 

二塁へ牽制をしたものの阿波野の送球は高めへ浮き、飛びついて捕る大石の

動きと逸れる送球に一度、二塁ベースに戻ったランナーは重心を三塁方向へ

移動して、ベースから足が離れる。

 

飛びついて捕った大石は着地の場所がちょうど二塁ランナーの上に

覆いかぶさるようになり、そのままタッチ。

アウトが宣告された。

 

どんな形でもアウトが欲しい近鉄としては、ラッキーだったが、

これにロッテ・有藤監督は大石がランナーを押したから足が離れたのだ、と抗議する。

 

当時、パ・リーグはダブルヘッダーの場合二試合目の延長は12回まで。

ただし、4時間を超えた場合、新しいイニングには入らないというものがあった。

 

9回裏時点で同点なので、近鉄が勝つには延長でケリをつけるしかない。

9回のこの抗議時点で残り20分ほどとなっていた。

 

球場は有藤に対してベンチへ帰れコール。

ロッテの本拠地なのに。


日本中が早く再開しろ、とこの時は思っていたはずだ。

ロッテファンも、西武ファンすらそう思っていたのではないか。

 

このプレーは振り返って映像を見ると、大石は押していない。

二塁ランナーが、自らベースから離れている。

 

この時、有藤は仰木から、「お前ら、もういいやろ」と言われたことに

カチンときて、あんたらだけで野球やってんのか、と反発していたが、

この有藤の主張はあてはまらない。

 

これが、大石が押して、本来セーフなら有藤が時間をかけて抗議してもいいが、

ロッテの二塁ランナーがベースから離れているのだから、

時間をかけてはいけなかった。

 

これは卑怯だったということだし、日本の野球ファンに大きな失望と不当な

ペナントを演出した、と言える。

 

これは結果論ではない。

あの時、日本中が早くベンチへ帰れ、と思っていたのだから有藤はそこを

汲むべきだった。

 

日本プロ野球史上に残る名勝負を台無しにし、野球の発展を削ぐ行為とまで言えよう。

 

制限時間が来て、勝ちがなくなった近鉄。

勝ちがなくなったということは優勝がなくなったということだ。

 

しかし、試合は続く。

裏の守りにつかなければいけない。

これを最も虚しい守備と表現されている。

 

そりゃそうだ、守るものが何もないのだから。

優勝がなくなった状態で敗けようが何しようがまったく関係なくなって

しまったのだ。

何を守るというのだ。

 

幾人もの選手が涙を流したこの10.19。

プロの選手が試合に敗けて泣いているのを初めて見た気がする。

 

その悔しさを翌年またも西武との接戦となりながら見事晴らすことになる。

 

昨年涙を飲んだダブルヘッダーを、この年はライバル西武を相手に

今度は二試合ものにする。

語り草となったブライアントの4打数連続ホームランで。

ブライアントの通算6度の一試合3発は日本記録だ。

 

この時、リリーフに回って打たれた渡辺はそれまでブライアントには

打たれたことがなかったインハイの真っ直ぐを投げ込んだが、

この時に限って弾き返され、上段まで持って行かれた。

 

ブライアントはポール際に飛んだ打球に切れないようにフーフーしながら

走っていた。

 

こうして、本拠地藤井寺で、優勝を決めた近鉄は巨人との日本シリーズへと進む。

 

近鉄3連勝で、これも語り草となった加藤のロッテより弱い発言が飛び出す。

しかし、加藤はロッテより弱いとは言っていない。

シーズンの方がよっぽどしんどかった。相手も強いですし。

と言った。

これを新聞がその年最下位のロッテより弱いという表現にしたのだ。

 

ただ、巨人打線は不甲斐ないということにはインタビューで肯定している。

オープン戦の延長とまで言っていた。

 

これに発奮した巨人が4連勝し、逆転日本一となった。

7戦で先制ホームランの駒田は、加藤に向かってバカと発言した。

 

梨田が10.19で引退し、同い年の中畑がこの年で引退。

中畑は7戦でホームランを放ち、自分でも驚いたかのように万歳しながら

感無量といった様子でダイヤモンドを周った。

ドーム初の日本シリーズでもあった。

野球情報メールマガジン

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

傑作コラム

TOP