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我が身にだけ頼るスポーツ

道具を使うスポーツのつづき。

2019-11-22 野球のように道具でやるスポーツは30歳くらいからがピーク

 

道具を使う野球では、体調が万全でなくとも、たとえば睡眠不足や空腹、2日酔いでも

結果が伴ってしまうことがある。

逆に、体調万全で臨んでも結果が伴わないということも起きる。

体に頼る陸上、水泳、体操も体調万全で結果が出ないことはあるが、

これら道具を使わないスポーツの中、体調不全で結果が出るということはない。

ここが大きな違いだ。

 

だから、病気と闘う池江に、その病を克服してまた、頑張ってほしいなどと安易な事は言えない。

池江が取り組む競技は個人競技であり、さらにタイムを競う競技だ。

メディアでは安心させる材料として過去にも白血病から復活した人達を紹介していた。

その中の多くは、サッカーやラグビーなど対戦型球技の団体競技だった。タレントもいた。

 

しかし、彼女の競技は水泳というタイムを競うのだ。

それは、コンマ何秒を競う世界であるため、とても繊細な調整や激しいトレーニングが要求される。

1秒縮めることに大変な研究と労力を必要とされる反面、

競技から離れることでタイムを落とすことはあっという間だ。

 

タレントであれば、病気が治れば仕事に復帰できる。

相手と点を争う対戦型の競技であれば、自分のコンディションが不十分でも相手の弱点をつくとか、

相手がミスをしてくれれば勝つことができる。

野球では全盛期のイチローが高校生の投球をミスショットする可能性が充分ある。

また、道具を使うスポーツであれば、その道具が成功に導いてくれる可能性がある。

バットという道具が目をつむって振っても、当たってしまえばヒットになる可能性すらあるのだ。

 

2日酔いや徹夜でも勝つことができる道具を使うスポーツと水泳ではわけが違う。

水泳は肉体だけで勝負し、相手となるのはタイムだ。

別のレーンを泳ぐ選手との競争ではあるもののタイムを争う。

コンディション不足で結果を残すことは不可能な競技なのだ。

その日の状態に関係ない、冷徹なタイムと勝負する。

さらに、団体競技なら自分のプレーに不満足であってもチームメートとの協力で勝つことができる。

個人競技は頼ることができるのは己のみだ。

コンディション不足、練習不足でどうにかなる競技ではない。

病気を克服し、普通の生活に戻すだけでも大変なのに、アスリートとしての体にまで

負荷をかけなければいけない。そしてさらに復活するには世界と伍して戦うまでの体にまで

にしなければならない。厳しい。

健康体で高い練習をこなして、精神も体も充実してこそ世界と対等に戦うことができる。

 

治療に専念してという言い方でさえ無責任なものだ。

1流アスリートの彼女からしたら、その舞台に戻れない気落ちは、

その舞台に立ったことのない人間のそれとは別次元のものだ。

まずは、治療と休養で治してそれから、などと悠長な言い分は勝負の世界には通用しない。

人生は水泳で世界一になることだけではないが、これまでそのことに人生を賭けてきた人に対して

まずは病気を治して、それから復帰してもらいたいなどと安易な言葉は用いられない。

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