思わぬ判定に対する選手の当惑を記した2022年11月16日の傑作。
情の入る余地のない、無味乾燥な判定こそが選手にとって一番歓迎するものだ。
審判の判定に不服な時、たとえば、アウトと思った守備側の当該選手がセーフとコールされ、
両腕を上げたり、膝を折ってかがみこんだり、「えー。うそー!」と
オーバーリアクションで表現することをよく目にするだろう。
その反対の判定の際の攻撃側の打者や走者も然りだ。
そのオーバーリアクションのあと、今度は呆然と立ちすくんだり、「そりゃないよ」といった表情で
審判を見たりする。
普段はおとなしかったり、おっとりした奴でもプレー中はこういう表現をする。
プレー中は常に先のことまで考えながらプレーしている。
この打者は塁に出せない。
盗塁は許されない。
この回、点を獲れなければ苦しい。
ここでは絶対に走者を進めなければいけない。
この打者を抑えられれば、かなり楽になる。
などその状況はいくつもある。
そういった中で、
たとえば、僅差の8回無死の場面、サインプレーで2塁ランナーを牽制で刺したとする。
すると二塁手は、サインプレーでピンチの芽を摘むという最高のプレーをしたことになる。
「よしっ、アウトにとった。これで楽になる。あとアウト5個とれば勝ちだ。勝ちが見えた」
と思った次の瞬間、「セーフ」とコールされれば、思いもしないことにガクッと力が抜けるのだ。
さらに身近で例えると、足をおさえてもらい、腹筋100回をするとする。
おさえてもらっている人に数えてもらい80回まできた。あと20回だ。
100回終わったら、つめたい水をがぶのみしてやる。
と思っているところに数え間違いで70回だったと言われる。
そしたら
「ちょっと待ってよ。ほんとかよ。そりゃないよ」となるだろう。
目標を設定し、もうすぐ達成できるという瞬間にマイナスの情報を持ち込まれたら力が抜けるし、落ち込む。