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弱小チームの間違った鍛錬 うまくはなるけど勝てはしない XVII

金曜連載17回目。

以前に、長い距離のタイムが良いことが、野球に関しては自慢にはならない。

それは、野球が弱いことを露呈しているようなものだ。

という話をした。それはコチラ⇒2016-10-14のコラム

 

野球で強くなるには体をでかくしなければならず、でかくするには長距離を移動するに適しない。

重くなるほど、移動させるにエネルギーを要し、それは大変な作業となる。

大谷も、上野もランニングが大嫌い。

 

そして、野球をするに必要なでかい体にするには、でかくできる素質がある体質がある。

白身の筋肉を持つ素質だ。

こういう体質の人はもともと細い体をしていない。身長が高くなくとも、がっしりしていることが多い。

したがい、大きくなくとも、長い距離は走ることができない。

そのかわり、短い距離を速く走る素質がある。

 

野球は数メートルから数十メートルを走ることを繰り返す。

よくランニングホームランを打った選手がホームでぐったりするシーンを見かけ、

プロの野球選手がだらしない印象を与える。

日頃、練習を繰り返し、きついことをやっているアスリートと呼ばれる選手がなんで?と思うが、

長い距離は一気に疲労する体なのだ。

疲れた表情にはパフォーマンスも入っているとはいえ、

たかだかベース一周の百数十メートル走ると息も絶え絶えとなるのだ。

 

若い頃、松井稼が、キャンプ中、球場から宿舎まで走って帰る練習を映し出していたが、

とんでもなく遅いとスポーツ番組が伝えていた。

筋肉マンで、バネのある松井は野球選手としては最高だ。

脚も速い。しかし、長い距離は全く駄目なのだ。

今まで、バネがあり足の速いやつを私も実際いろいろ見てきたが、共通して長距離は全く駄目だ。

短距離は速いのに、長距離は、誰よりも遅くなる。

 

これをもってして野球選手は体力がないという評になったり、

試合中、突っ立ってばっかの野球選手に体力がないのは当たり前という評があるが、

これは当てはまらない。

むしろ、体力とは長い距離を速く走ることや運動を長時間続けられることを言うのではなく、

体がでかく、相手をねじ伏せることを言う意味の事の方が、字と意味があう。

 

野球選手は、タバコを吸う選手が多いが、それは長距離を速いタイムで走る必要がないから。

サッカー選手で特に中盤の選手など運動量の多い選手で喫煙者は、まずいない。

フォワードはいるみたいだけど。

 

20年程前、たまたま巨人の移動バスの後ろに車をつけたことがあったが、

そこかしこの窓から煙がもくもく、手にたばこが見えたことには驚いた。

野球選手はこんなにタバコを吸う選手がいるのか。と。

 

つまり野球で上達、勝つ素質のある体質をもつ選手は

ハナから長距離を走ることはできないということになる。

 

野球選手はパワーをつけようと、下半身を鍛え太くし、ケツを鍛え、でかくし、上半身を鍛え太くする。

そのためには、食事も多くとる、そして自然と脂肪もつくことも仕方がない。

 

高校野球選手でも有望とされる選手はみな、下半身が太くてしっかりしている。

もしくは、今後その部分の成長が見込める選手だ。

「野球選手はケツで買え」とは昔よく言ったもの。

 

長い距離を走るには、体脂肪率は下り、体重も軽くなる。

箱根で「山の神」と言われた神野は体重40キロ台だそうだ。

 

野球選手が体をでかくし、長距離に適しないのはその競技に合わせた結果だ。

もしくは、その競技の特性がそういう人間を欲している。

 

その競技のルールが体型、体質、を決めるということだ。

サッカー選手は1試合で10数キロ走破する。

しかも、一瞬のスピードも要求されれば、長い距離の走力も要求される。

そのためには、体脂肪率を抑え、体はでかくできない。

ルールで体のでかさが求められていないのだ。

空中の競り合いやゴール前での競り合いでは体のでかさが有利になるが、

試合全体を有利に動かすのは脂肪をそぎ落とした体の方だ。

 

野球選手とサッカー選手で短距離を走るとする。

すると、100m近くの長さでは、野球選手に速い選手が多くなり、

30mから50mくらいだとサッカー選手も速い選手が多い。

サッカー選手は体が軽いので100m近くになると、体重が乗らず

浮いてしまい、減速が激しいのだ。

 

競技がちがう、ルールがちがう選手同士を、同じ尺度で計り優劣はつけられないということ。

 

阪神のキャンプではリレーをしているシーンがあった。

250メートル2週つまり500mでバテバテの選手ばかりだった。

小柄な上本もおなかの出た選手に抜かれていた。

長い距離は走れない筋肉なのだ。

 

これは、筋肉の質なのでだらしないとか能力がないとかいうものじゃない。

男が女に、女が男になれないようなもので、もう無理なのだ。

体の特性がそれぞれ違うということ、そのかわり、瞬発的に大きな力を出す能力は高い。

 

たとえばメッシ。

なぜメッシが止められないのか。

屈強な男たちならメッシのような小さい男の突破など許さないのではと思えてならなかった。

 

メッシの特長は短い脚によりステップが小さいということ。

ボールを持った瞬間の1~3歩のスピードが速い。

この場合のスピードは直線を走るスピードではない。

ヨーイドンで走ればメッシより速い人はいっぱいいるだろう。

50メートルいや30メートルでも速いとは限らないのではないか。

 

短い脚で小さいステップそしてボールタッチの多さ、ボールが足にくっついて離れない感じ。

そしてこのワンステップツーステップの素早さで相手の前に出る。

相手より数十センチ前に出ればいいのだ。そうすれば体を入れてしまえばいい。

体で相手がもう一度自分の前に出るのを防ぐ。

数十センチ前に出て、相手が手を使えば反則をもらえばいい。

 

高校生の頃、プロ野球キャンプで伝えられる野球選手の長距離タイムが

私より優れている選手が一人もいなかった。

高校時代名門校で厳しい練習をしてきた選手たちが、一人も私に勝てないのは驚いた。

しかし、うまい、強い野球選手は、長距離は、走れない。

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