最後の場面での村上は楽な打席だった。特別、栗山が信頼したことが実ったわけではなく、無死で1,2塁、相手は右ピッチャーと来たら思い切り打てばいいだけの場面だ。もっと前の段階でビハインドで左ピッチャー2死2塁くらいの場面なら代打もあろうが、ここは三冠王に打たす以外の選択はない。三冠王に代打など日本野球の負けを意味する。日本のNO.1打者の称号は当然日本を背負うことになり、日本最高打者が世界を粉砕してこそ日本野球が世界一になる意味がある。
村上の最初の打席、右ピッチャーだったので期待が持てた。チェンジアップやツーシームを左中間に打てると踏んでいた所、甘い球が初球から来たので思い切り振り切った。逆に2打席目はスリークォーターの左ピッチャーだったので村上が最も打てない相手だった。こういうピッチャーのスライダーを村上は追いかける。前の打席でホームランを打って気を良くしているので打ち気満々だからなおさらだ。その通りの最悪ゲッツー。
勝ち負けだけが全てじゃないが、勝つことより優先されることはない。そうして出た結果を受け止める。スポーツなんてなくても生きられる。しかし、人は感動するために生きている。感動するなら命さへ削るのが人間だ。